「モーニング」で好評連載していた「東京1000円味のグランプリ」の第3弾!
2册目の「おかわり!」の次は、「そっと出し……」というわけで、
ここでないとみられない、マスヒロとマッキーの競演3ステージ目がスタートです!!
西新橋/逢坂
天丼(1,300円)
東京都港区西新橋2-13-16多田ビル1F
03-3504-1555
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午前11時半を過ぎたあたりから、新橋駅周辺はにわかにビジネスマンの姿が目立つようになる。昼ごはんを求めて、街中の飲食店へ繰り出すためである。その波をよけ、日比谷通りを越えて、人通りが少しは静かになったと思ったところに店はある。
ところが、のれんを分けて店内へ入ると、12時前だというのに、カウンター席もテーブル席もいっぱい。壁際には席が空くのをいまかいまかと待つ人までいるほどの盛況である。
そのほとんどの客が注文するのが、天丼と同じ値段で食べられる天ぷら定食。海老、小きす、穴子半分、もう一度海老、南瓜、かき揚げと次々に揚げてくれる。テーブルには塩が用意されていて、天つゆでなく、この塩をつけて天ぷらを食べる客も多い。中には、南瓜までは天つゆで食べ、かき揚げはごはんをお替わりしてその上にのせ、そこに塩を振りかけて途中まで味わい、それから今度はほうじ茶をかけ、天茶にして楽しむという、三段階の食べ方で天ぷら定食を堪能している客もいる。
それを横目で見ながら、わたしが注文するのは天丼である。天丼に盛られた天種は定食で揚げられるものと同じだが、甘辛いどんつゆにちょいとつけられた天ぷらがごはんとなじんでとても美味しい。これを掻っ込む醍醐味がたまらないのである。みそ汁もつけものも丁寧に作られたもの。このほか、穴子天丼1,600円がある。
(※天丼、天ぷら定食は月曜〜金曜までのランチのみ)(山)

香り高いそばだ。などとよく表現するが、そばの香りとはなんだろう。以前名人が打つところを拝見したことがあるが、粉に水を回すその瞬間立ち上った、甘い、それでいて野生を感じさせる草のような香り、それがわたしにとってのそばの香りの基準となっている。だがその香りも、玄そばの産地によって変わる。香りだけではない、甘みも色も産地によって異なるのがそばである。
そのことを教えてくれるのが若き主人が切り盛るそば屋「眠庵」である。店には「二種もり」そばという品書きがあり、産地の違うそばを出してくれる。最初に訪れた去年末には、山形と黒姫という順でせいろが出された。並木藪のようにざるの凹面ではなく凸面を上にして盛られた極細の手打ちそばである。灰色に緑が入った明るい色合いの山形産は、優しい甘みがあって、香りも穏やかである。一方黒姫産は、やや黒味がかって、草の青々しい香りが強く、噛むとほろ苦いえぐみも感じる野味に富むそばだ。店主はわざとタイプの異なるそばを打ち分けるため、このように違いが明確に伝わる。
今年になって訪れたときは、栃木産、福井産の順に出された。色白の栃木は極細で、ほのかな草の香りに甘さが混じった、穏やかな気分にさせられるそばだ。一方福井は、灰緑色が強く、栃木よりやや太めに打たれて、そばの野生を主張する。
聞けば、店を始める前に、そばの産地を巡って作り上げた生産者との繋がりによって、こうした品書きが出来るのだという。そんな眠庵には夜な夜なそば通たちが集っている。これからが楽しみなそば屋である。(牧)
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根津/根津 釜竹
釜揚げうどん(850円)
東京都文京区根津2-14-18
03-5815-4675
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本店は大阪・羽曳野市にある。いまから10年ほど前、関西のうどんをあちこち20店ほど食べ歩いた。どの店も京阪ではよく知られたうどんの名店だったが、なかで群を抜いていたのが羽曳野の「釜竹(かまちく)」だった。品書きには細打ちざるうどんと釜揚げうどんの2種のみ、きつねうどんすらない極めつけのうどん屋である。その代わりといってはなんだが、「麺前酒」と称して銘酒(黒龍、磯自慢、九平次、義侠など)がずらりと揃っていて、酒の肴も豊富だった。そのひとつ、うるめいわしに山形の銘酒「十四代」を合わせたときの相性の見事さといったらなかった。わが人生で、清酒と肴のベストマッチのひとつである。
そして、そのあと食べたざるうどんのうまかったこと。艶があって、柔らかな噛み応えがあり、小麦の味がなんとも豊かなうどんだった。讃岐うどん派に袋叩きにあうのを承知でいえば、うどんにコシなどいらない、なくてはならぬのはハート、うどんの魂である。そのことをさらに実感させるのが、釜揚げうどん。釜揚げで茹で上がったばかりのうどんは、生まれたてのうどんの赤ちゃんの味わいである。ダシにしだいにしょうが、青ねぎ、てんかす(揚げ玉)を加えてゆくと、うどんの生々流転が味わえる。
2005年秋、東京に進出。根津に支店を出した。注文してからうどんを刻みはじめるところからして、本店のすべてを踏襲している。(山)

京橋/京すし
ハーフ丼(1,120円)
東京都中央区京橋2-2-2
03-3281-5575
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京橋の横丁にひっそりとたたずむ「京すし」は、木造一軒屋、瀟洒な店構えのすし屋である。店に入れば、椅子やカウンター、テーブル席などがしっとりと空気に溶け込んだ、古い店ならではの落ち着きが漂っている。風格があり、一見敷居が高そうな雰囲気があるが、昼時は近隣のサラリーマンが気軽に暖簾を潜っていく。お目当ては、四種類揃う丼だ。
丼は、「鉄火丼」1,200円、「アジ丼」、「サバ丼」「イナダ(ハマチの時もあり)丼」各980円で、酢生姜ともみ海苔を散らした酢飯の上に質の高い魚の切り身をのせて供される。さらには品書きにはないが、常連たちが「ハーフ」もしくは「ミックスで」といって頼む、二種類の魚を盛り合わせた丼である。ある日わたしも常連に習い、イナダとマグロのハーフ丼をお願いした。
丼の表面を覆うように、包丁の冴えが光る切り身が約九切れずつ並べられる。鉄分が舌に乗ってくるマグロの赤身と脂が程よくのった身を活からしたイナダ。いずれも質が高く、鉄分や脂分がほの甘い酢飯と口の中できれいに馴染みあう。
一切れずつ醤油に漬けて食べてもよいが、わたしの食べ方は、香り高いわさびを一切れ一切れにのせ、さらにほんの少量わさびを溶いた醤油を、気配りしながら少しだけ回しかける。しかる後、一気呵成に掻き込むのである。交互に食べれば実に楽しく、また、イナダとアジ、あるいはアジとサバのヒカリ種のミックス(各980円)も魅力的だ。
食後が清々しくなる、老舗のお値打ち丼である。(牧)
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ヨーロッパから帰りのANAの飛行機に乗っているとき、機内誌「翼の王国」の豚肉特集で見かけた1軒である。
「やまと」の看板には豚肉創作料理とある。料理では、創作とわざわざ銘打ったもので、まず出色のものには出逢わないものなのだが、“不老長寿鍋”というネーミングに魅られて出かけていった。
カウンターの席に案内され、手渡されたランチのメニューを眺めると、“不老長寿鍋”に辿り着く前に“とんかつ”に目がいってしいまった。ずっと手頃な値段であったため、まずは試しとこの“とんかつ”を注文してみた。
すると、運ばれてきた“とんかつ”はケレン味がまるでない、それでいてとても上手に揚げられたとんかつだった。なにより、“やまと豚”の肉質がいい。赤身は甘くてうまみが十分に感じられ、脂身は溶けるがごとくの美味しさだった。豚肉創作料理の看板なんて必要ないのじゃないかと思われるほど、東京の伝統的な郷土料理の味わいだった。
こうなると、“不老長寿鍋”(2,310円)が気になることしきり。1週間後の昼に再び出かけて、同じカウンター席で食べてきた。昼でも1人前でも楽しめるのがいい。鍋のスープはかなり辛味が利いているのだが、ゴマの風味がほどよく緩和剤になっている。ここへ豚ロースの薄切りを落として、しゃぶしゃぶにする。美味。(山)

赤坂/ビストロブルゴーニュ
デジュネ(1,200円)
東京都港区赤坂3-10-4赤坂月世界ビル2F
03-3505-2399
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2005年9月の開店、出来立てのビストロである。しかしもうすでに、ビストロならではの空気が熟成しはじめている。夜に出かければ、今宵のひと時を楽しもうと集う人たちの気分が横溢していて、フランスの田舎町のビストロを感じさせる店内は、おいしい賑わいが響き渡っている。男性二人組も、女性同士のグループも、一人客も、ワインを傾けながら、分厚い田舎風テリーヌやブルゴーニュ風のエスカルゴ、カッスレー、丁寧な仕事が光るトリップの煮込みなどを楽しんでいるのだ。新しい店にありがちな気負いはなく、くつろいでワインや料理を味わってほしいという素直な店の気持ちと、客たちの積極的な食欲が自然になじんで、こうした雰囲気を作り始めているのだろう。
さて、そんな新生ビストロのデジュネが11月に入り、魅力的を増した。鴨のコンフィやバスク風ステーキと並んで、鹿の赤ワイン煮込みがラインナップされたのである。
ほろりと煮込まれた鹿肉は、やさしい滋味を噛み締めると鉄分が滲み、それが切れのいい赤ワインソースとなじんで、少量ながらも堂々たるフランス料理である。付け合せは、やさしい甘みが漂う、白インゲン豆、ベーコン、白菜、にんじんによる煮込み。またバターライスが添えられているので、ソースを混ぜ込むように食べても楽しい。この皿に、葉サラダとデザートがついて1,200円。ビストロはこうでなくちゃ。だが困ったことに、つい昼からワインを飲みたくなってしまうのである。まあそれもビストロか。(牧)
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赤坂/豆腐家
さんま塩焼定食(800円)
東京都港区赤坂3-5-2サンヨー赤坂ビル1F
03-3582-1028
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2004年12月末、わたしがこよなく愛したフランス料理店「ビストロ・サンノー」が閉店した。1973年の開店だから、なんと32年間もの間、同じ場所で同じスペースで地道にレストランの営業を続けてきた。店は2階にあったので、階段をトントンと上がって、わくわくしながら店へ入っていったものだから、階下、つまり1階の和食の店にはいつも一瞥しかくれなかった。
最近、その1階の割烹料理店「豆腐家」ののれんをはじめてくぐった。これがじつにいいのである。刺身、焼魚をはじめ、野菜の炊きものなどが、どれもリーズナブルな値段で、味つけも上品ぶってない。まさしくビジネスマン向けの大衆割烹料理店の上質版といってよい。なにしろ居心地がとてもよいのだ。
季節だからと、焼魚はさんまの塩焼を注文した。これがあぶらがのって、うまいの、なんの! 焼き加減がとても丁寧で、焦げたところがほとんど見受けられないさんまの塩焼だった。ただし、頭の部分の焼きが足らなかったため、残すのはもったいないと、板前さんに改めてこんがりと焼いてもらった。これが、身やはらわたの上をゆくうまさ。酒飲みなら、こたえられない肴となるひと品だった。
これをキッカケに昼の定食にもこのこんがり焼いたさんまの頭を別皿で出すようにしました、とのお知らせをうけ早速出かけてみた。ごはんのおかずに最適。他所ではみかけない、ユニークなさんま定食となった。(山)

銀座/芝蘭
酸辣湯麺(1,000円)
東京都中央区銀座7-8-15銀座新橋会館2F
03-3573-0301
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酸辣湯は、四川地方の代表的なスープである。胃腸が弱っている時や、風邪に効果があるとされるスープで、最近の辛味ブームのせいかよく見かけるようになった。それもスープ麺状態にした、酸辣湯麺としてである。
カップ麺まで登場した人気麺は、本来、辣油と黒胡椒で辛味を出すが、東京では黒胡椒だけで作るものが一般的である。一見すると穏やかな色合いながら、飲めば、ひりりと鼻を突く黒胡椒の刺激と口腔を締める酸味が、風邪など吹き飛んでしまいそうな爽快感を呼ぶ。。そこが魅力である。
ところが「芝蘭」のそれは、姿からして違う。赤黒い、見るからに辛そうなスープには、みじん切りのねぎが浮かび、白い中細麺の上には、炒めたひき肉と青菜、ピーナッツ、それに唐辛子がごっそりと乗っている。顔を近づければ、まず山椒の香りが鼻を刺し、麺をすすれば、至極辛い。辛味が口内で爆発して粘膜を痛めつける。だが、黒酢の練れた酸味とコクが辛味との均整を見事にとっていて、すいすいと飲み進ませてしまうのである。やがて辛味に慣れて(麻痺して?)くると、自家製だろう、ベースとなっている辣油に溶け込んだ複雑な香りに山椒の香りが加わって、なにやら陶然とした気分となってくる。香りだけではない、スープやひき肉のうまみ、辛味酸味、ピーナッツの歯触りや甘みなども混じり、渾然一体となった味わいが押し寄せる。汗、涙、鼻水を大量流出し、痺れた舌を犬のようにあえぎながら、ふっと微笑みたくなる、奥深い麺料理である。(牧)
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代官山/FISH &CAKEDELI
フィッシュケーキ・セット(580円)
東京都渋谷区代官山町10-1
03-5728-4147
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小田原の「鈴廣」といえばかまぼこで知られているが、この「鈴廣」がかまぼこ同様、魚のすり身をベースに旬の魚や野菜を加えて作ったものがフィッシュケーキと呼ばれるお惣菜である。
店は東急東横線代官山駅より歩いて3分ほど、ブティックが建ち並ぶ通称キャッスル通りの一角にある。1階がテイクアウト専用のショップで、食事の出来るレストランと呼ぶほどのスペースはないが、カウンター席が2階に、テーブル席が3階にある。
フィッシュケーキは、新型のつみれを想像するとよい。通年のメニューとして、香草(パクチー)、たこ、パプリカ、ひじき、れんこん、えび、水菜があり、それに季節のメニューが加わる。この中からフィッシュケーキを2種選び、ひじきごはんがついたものが、「フィッシュケーキ・セット」である。マヨネーズ、ケチャップ、梅、わさび、レモンなどのソースと一緒にフィッシュケーキを頬ばり、ひじきごはんを掻っ込む。それぞれ素材の味がしっかりした上で、塩加減が穏やかだから食が進んで食べ飽きない。サラダセット880円はこれにサラダ(海藻とじゃこのサラダ、焼き野菜のサラダなどから選択)をつけたもの。また、さらに200円増しで焙じ茶や前菜、コーヒーをつけることも出来る。フィッシュスープ420円やクラムチャウダー420円もサイドメニューにあり、代官山に居ながらにして、潮の香りが楽しめる。(山)

高円寺/さぬきや
冷やしカレーうどん(1,200円)
東京都杉並区高円寺南4-38-7
03-3314-4488
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そば屋で一杯やるのは楽しい。焼き海苔や板わさ、鳥の照り焼きや天ぷらそばの台抜きなどで、人肌の燗酒をちびちびと飲むのは、大人の喜びでもある。
うどん屋であるとこうはいかない。肴を用意する店も増えているが、うどんそのものを食事として食べる目的が主であり、どうも一杯やるという雰囲気が生まれてこないのだ。ところが最近、最適の店を見つけた。高円寺でもう四十年もうどん屋を営む「さぬきや」が、改装と共に、酒を飲みたくなるうどん屋へと変身したのである。
息子さんの代となって、転換したのだろう。カウンターに陣取るお客さんたちは、皆とっくりを傾けながら、ゆるりと時間を過ごしている。銘酒の揃えもいい。酒飲み心のツボを突いた、旬の野菜や魚料理もいい。こりゃあ飲むしかないぞ、という空気に満ちている。
とっぷりと酒をやった後に悩むのが、締めのうどんである。小麦粉の甘み漂うもりうどんもいい。味が染みたきざみうどんで体を温めるのもいい。しかしこの季節ならではのお奨めは「冷やしカレーうどん」である。どろりとしたうどんに絡むカレーソースの味が、なめらかで舌に優しく、強いうどんのコシと相性も良い。さらには、細かく切って入れられた紫蘇、わけぎ、穂紫蘇、茗荷、香菜といった香味野菜が後口をさわやかにさせる。カレーの味が積もってきたら、添えられた梅ゼリーを口に含んで、リフレッシュ。具の牛肉冷しゃぶしゃぶの脂も上質なのでいやみがない。ほろ酔い気分を穏やかに収めてくれる。(牧)
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JRもしくは東急大井町線の大井町駅から歩いて5、6分、駅前通りを東へ進み、すずらん通りを入って、その通りの終わり際に店はある。看板には「チキンカレー専門店」とあるが、店内に入り、カウンター席に居並ぶ客たちが食べているのは、この店評判の“スープカレー”である。
このところ急に人気の出てきたスープカレーは、カレーとライスが別盛りになっていて、客が好き勝手に、別々に食べたり、ライスにかけまわしたり、はたまた、スープにライスを落として楽しんでいる。
まずはガーリックチップスのパラパラッとかけられたライスが登場。しばらくしてスープカレーがスープボールになみなみ注がれ、野菜が山盛りになって現われる。野菜は素揚げされたにんじん、かぼちゃ、青唐のはか、ふうわりと山盛りされた白髪ねぎ。スープの中には、骨付きチキンとキャベツがたっぷり入っている。
まずはスープをひと口。チキンベースにスパイスがほどよく香り、喉をスルリッと通りながらも、辛さばかりが目立たない。スプーンをちょっと当てただけで崩れる骨付きチキンもしっかりと鶏の味がする。スープに白髪ねぎが溶け出すころには、味わいは渾然一体。これで850円はお値打ちである。看板のチキンカレーはココナッツ風味。トッピングに揚げ玉子やコロッケがある。食後のラッシーも爽やかな美味しさ。揚げ玉子 100円 ラッシー350円(山)

代々木上原/飄香
ランチ(1,000円)
東京都渋谷区上原1-29-5BIT代々木上原001
03-3468-3486
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話題の中華である。店名「老四川 瓢香(ピャオ・シャン)」とは、古きよき四川が香り漂うという意が込められていて、辛いだけではない、奥行きのある香りを放つ、変化に富んだ料理がいただける店として連夜満席である。
鮎と山椒の香りが交差する「鮎の香り煮」や茶の優しい香りが胃をくすぐる「海老とマコモダケの西湖龍井茶炒め」、穏やかな風味の「上海風豆腐の煮込み」、米粉の甘みと鳥の滋味が調和する「鶏の米粉蒸し」、手打ちめんによる「正宗坦坦麺」や「ニラ和えそば」など、上海と四川で修行したという井桁良樹シェフによる料理は、過剰な味付けがなく、素材の香りが伝わってくる。
昼の定食にもそうした氏のエッセンスは生かされている。まずは、金木犀が甘く香るミニトマトの漬物、インゲンのカラカラ炒め、新ジャガイモの炒め、豆腐のゴマソースかけ、泡菜などからなる三種の突き出しが出され、胸を弾ます。主菜は三種類。おすすめは「金華ハムと冬瓜、鶏肉の塩味煮込み」で、干し海老の香りと鶏の風味、金華ハムのコクを吸い込んだ冬瓜が、口の中でほろりと崩れる上品な味わいである。中国料理ならではの淡味が気分を穏やかにしてくれる料理だ。
料理で気分が和らいだなら、食後はぜひ、甘い南方と香りの北方、2種類の杏仁を使った「杏仁豆腐」300円を追加なさってはいかがだろう。(牧)
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店は浅草ビューホテルの並びにあって、大通りに面していながら、いままでうっかり気がつかなかった。2005年8月、つくば新線が浅草まで乗り入れることになり、花川戸からこの場所に移ってきたという。
“極上塩上湯麺”は別名「しおらーめん」だが、しおらーめんと呼んではもったいないほど上湯のスープが素晴らしい。そのスープの中に小麦粉の味がする麺と丁寧な味付けのチャーシューとよく煮込んだメンマのみが盛られている。シンプルにして、滋味あふれる塩味の上湯麺といってよい。これが750円とは信じられない。
「龍圓」は当然ラーメン専門店ではない。“極上塩上湯麺”は食事の最後にいただいたのだが、そのとき選んで食べたものを並べれば、
富山湾内ものホタルイカの老酒漬け 950円
ミストマトの酢豚 2,300円
焼きぎょうざ 5ヶ 450円
しゅうまい 3ヶ 450円
上湯炒飯XO醤添え 1,200円
これを3人でいただいた。
どれもこれも逸品揃いだが、食べ終えたとたんにすぐ食べたいと想ったものは、焼きぎょうざと上湯炒飯で、ぎょうざは酢も醤油もいらないほどにあんの味わいがいい。上湯炒飯は、ごはん粒がパラパラに仕上がったものを、1杯はそのまま、もう1杯はスープをかけまわして食べた。どちらの味も文句なしのうまさ。メニューには料理がまだまだいっぱいある。「龍圓」通いがはじまりそうである。(山)

東銀座/えすと
えすとカレー(600円)
東京都中央区銀座3-14-2
03-5565-2933
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東銀座の小さなカレー屋である。ひっきりなしにお客さんが訪れる店内は、カウンター6席のみ。その6名のお客さんに対して、スタッフも6名。テイクアウトもあるとはいえ、銀座「ロオジエ」なみの接客姿勢である。若いスタッフがきびきびと働いていて活気があり、サービスもすがすがしい。
できますものは、サラリーマンのために、毎日食べても飽きない胃に優しいカレーを目指したという「えすとカレー」と、辛口の「インデェアンカレー」に「タイグリーンカレー」の三種類。「えすとカレー」を頼めば、ご飯の山を背後に控えて、なみなみと茶色のソースが注がれたカレーが現れた。まずはカレーだけを味わってみれば、穏やかなうまみが広がって、あとからほんのり辛さがやってくる。うまみや辛さが過剰ではなく、さりげなくこちらの体調を気づかうようなカレーである。ご飯に絡めれば、なんとも相性がいいことに気づく。「ひとめぼれ」だというそのご飯は、ぴかりとひかり、もっちりと歯を包み込むような食感を持っている。その甘さがカレーの穏やかなうまみとすんなり手を組んで、「ああうまい」とつぶやかせる。白い部分は一部残しておいて、あとは米一粒一粒にからむようよくよく混ぜて食べ、その後味でまだ白いご飯を食べてもおもしろい。あとはナスやブロッコリー、温玉やヒレカツといったトッピングを追加して楽しもう。(牧)
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西荻/HUGE
チキンカレー(950円)
東京都杉並区西荻北2-27-7
03-3399-2110
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身びいきが過ぎるとお叱りを受けそうだが、またまたわが町西荻窪の美味しい店のご紹介。このところの西荻窪の一番人気は、「坂本屋」のかつ丼であるが、その「坂本屋」のある北口商店街は、近ごろ“西荻窪カレーストリート”と呼んでもよいほどカレーの美味しい店が集まってきている。
駅からいくつか挙げると、まずは「ムーハン(夢飯)」。ここのはココナッツミルクがほどよく入ったマレー風カレー。続いては、「J.T Spice」の野菜と挽肉のカレー。店はカレーの雰囲気を漂わせるものはひとつもない居酒屋だが、カレーは香り高くライスも美味しい。それから「ガネーシャ・ガル」。こちらはナンが抜群に美味しいインドカレーである。
最新のカレー専門店がこの「HUGE(ヒュージ)」。といっても2005年4月で満1周年を迎えるカウンター席のみのカレー専門店である。カレーは4種あるが、わたしのお気に入りはチキンカレーと、オクラとしめじのポークキーマカレー。
チキンカレーはココナッツ風味で酸味がほどよいアクセントになっている。それに比べると、オクラとしめじを豚の挽肉に合わせたキーマカレーは辛くない。このどちらのカレーも生ビールを添えて食べはじめると、応えられない。とりわけチキンカレーのソースとの相性は抜群で、カレーもビールも一段と美味しくなるのだ。気が向いたときに西荻窪駅下車をして、味わってみてほしい。(山)

炸醤麺は、北京を代表的する麺料理である。その名が指し示す通り、炒めた挽き肉や肉の角切りに、生姜やにんにく、老酒などを入れ、味噌を油で揚げるように炒めた肉味噌ダレを、麺にからめて食べる。日本にもすっかり定着してファンも多いが、わたしはあまり頼むことがない。なぜなら、肉味噌ダレの甘みが舌に残って後味が悪くなる場合と、味の濃さに麺が負けている店が多いからである。
しかし北京から出店した北京ダックの老舗「全聚徳」のメニューに見つけたときは、迷わず注文した。この店の北京ダックがそうであるように、日本にカスタマイズされない炸醤麺がいただけると思ったからである。
はたして現れた炸醤麺は、茹で上げた麺だけを入れた丼に、味噌ダレを入れた小皿と、胡瓜の千切り、錦糸卵、ひげ根と頭を取った茹でもやし、茹でキャベツの細切り、セロリの粗みじん、枝豆を盛った平皿が添えられている。早速具と半分の味噌ダレを丼に入れてよくよく混ぜ込んだ。茶色く染まった麺に、枝豆や胡瓜の緑が映える。肝心の味噌ダレは、練れた塩気と香気の中にすんなりと甘さが溶け込んだ、深い味わいだ。受け止める麺は、白い平打ちのよれた太麺で、幅広い面積でタレをよくからめとるばかりか、歯を押し返すような強いコシを弾ませる。そこに野菜類のみずみずしい歯応えや香りが連動する。思わず笑みがこぼれ、箸を持つ手が加速する、三位一体の痛快な共演である。(牧)
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銀座/成富
ごぼうのかきあげそば(1,100円)
東京都中央区銀座8-18-6二葉ビル1F
03-5565-0055
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築地の朝日新聞社近くに2004年暮オープンしたそば屋。ご主人の成富さんが両国の「ほそ川」で修業したとのことを聞きつけて出かけた。品書きを見ると「水菜と辛味大根のおろしそば」というひと品があり、「ほそ川」の名品「ねぎと辛味大根のおろしそば」を思わせるそばが目についた。
竹の子のてんぷらで1杯やったあと、まずはせいろを注文。猪口につゆがたっぷり注がれていたので、願い出て半分以下に減らしてもらう。聞けば、客からの注文でつゆの量がふえてしまったとのこと。それならやはり徳利でつゆを出してくれるとよい。そのつゆはキリリッと締まったつゆで、「ほそ川」よりわずかに太めのそばによくからむものだった。
そうして、水菜と辛味大根のおろしそば。ねぎと違って水菜のシャキシャキとした歯ざわりがあるところへ辛味大根のおろしがのどにヒリリと効く。ねぎ、おろしヴァージョントとはみと味違った面白さが楽しめる。(山)

盛岡名物じゃじゃ麺をご存じか。盛岡では冷麺と並ぶ、傑作帰化麺料理である。わたしも盛岡で食べ、その毎日食べてもあきない庶民性に、こりゃあはまるわと納得した次第である。盛岡だけではなく、全国的にも普及できる力を持っているのだが、東京に進出してこない。以前新大久保に専門店ができてファンを喜ばしたが、場所が悪かったのか、ある日こつ然と姿を消してしまった。途方に暮れた人々を救ってくれたのがこの店である。
出しますものは、じゃじゃ麺一筋。麺の量を選びしばし待つと、茹で上げた平打ちの太麺と肉味噌、ネギ、胡瓜の千切り、おろし生姜を入れた丼が運ばれる。まずはひたすら混ぜる作業に専念し、生姜を少し混ぜ込んで食べるべし。甘み、香り、ほろ苦味、塩気などバランスの取れた味噌の味が、胃袋を刺激する。次にちょいと酢を入れ、さらにはラー油、おろにんにく、胡椒を順次加えて、味の変化を楽しむ。盛岡人は銘々の好みがあって、達人ともなれば確固たるマイ配合があるそうだ。さて八割ほど食べ終えたら、生玉子を割り入れて混ぜ込む。ここでご主人に丼を差し出し、鳥のスープを入れてもらってチータンタンにしてもらうのが、じゃじゃ麺の流儀だが、わたしの場合は玉子の混ざった麺を少し食べてから差し出すようにしている。チータンタンは、優しいダシに玉子の甘みと味噌ダレの風味が加わって、後引く味わい。またこの店に来ようと思わせる、心にくいシメである。(牧)
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南青山/青山川上庵
昼定食コース1(1,260円)
東京都港区南青山3-14-1
03-5411-7171
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南青山の「正(GOKAKU)」へ昼めしを食べに出かけようと、表参道の地下鉄の出口から青山通りを外苑方向に歩いていると、チラシを配っている背の高い男の人から声をかけられた。よろしかったらお昼ごはんにおそばはいかがですか? というものだった。普段ならチラシは受け取らないのだが、飲食店のものなら新情報かと思っていただいた。その葉書大の案内を見ると、なんといまから出かける「正(GOKAKU)」の並びだった。そこで、その日は店の前のメニューを眺めるだけにし、数日後に店を訪れてみた。
昼の部の品書きはいくつもあり、そば以外にもお勧めがいろいろとありそうだったので、まずはと、1,260円のコース1という昼定食を注文してみた。内容は前菜(茄子と生麩の揚げ浸し、豆腐の醤油豆掛け、鴨ロース)、旬の野菜の小天丼、一口そばといったもの。
前菜の3品は傑出したものはないものの、つけたしのようなひと品もなく、どれも美味しくいただけた。揚げ浸しは温製で出汁からそばつゆの出来を想像させた。旬の野菜の小天丼はなす、かぼちゃ、しめじなどが軽めに揚げられ、小さな丼に盛られている。つゆのかけられたもりそばが一緒に出てきたため、そばからいただくと、これがつゆにうまくからんでのどごしのよいそばだった。続いて、野菜の小天丼を平らげても、お腹はしっかり一杯というわけにはいかないが、軽めの昼めしには打ってつけのメニューである。(山)

高円寺/チョップスティックス
温野菜と豆乳スープのフォー(880円)
東京都杉並区高円寺北3-22-8大一市場内
03-3330-3392
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ベトナムの麺料理フォーの魅力は、スープと香りにある。牛骨や鶏ガラ、野菜類を丹念に煮込んだ、深みとクリアーな旨味を合わせ持つスープと、ハーブ類が織りなす爽やかな香りは、実に優しく、洗練された味わいである。このスープに麺の魅力を加えたのが、「チョップスティックス」である。
店は、駅前の大一市場というわずか30m足らずの簡易市場の中にあって、屋台のような小さな店である。だが店先には、「日本初のフォー生麺の店」という文字が誇らしげに躍っている。現地では蒸しあげた麺を使っているフォーだが、ご存じのように日本のベトナム料理屋の麺は、乾麺である。
まずは基本からということで、「蒸し鶏のフォー」を頼む。やがて運ばれたフォーからは、シナモンだろうか八角だろうか、甘い香りが立ちのぼって食欲をそそる。鶏のスープはふくよかな滋味を漂わせ、飲むごとに旨味を増していく。生麺はやわな乾麺と違って、ほの甘い米の香り漂い、口当たりが滑らかでモチモチとしたコシを弾ませる。この香りと確かな食感があってこそ、滋味豊かなスープ受け止めるのである。後日いただいた「温野菜と豆乳スープのフォー」は、さらに麺とスープの相性よく、思わず笑いがこぼれるほどであった。ぜひ今度は、追加料金を取ってもいいので、バジルや香菜をたっぷり使ったフォーで、スープ、麺、ハーブががっぷり四つに組んだ真骨頂をいただきい。(牧)
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「ROTI」はローストを意味するフランス語だが、店名のサブタイトルには「MODERN AMERICAN BRASSERIE」とあり、アメリカンスタイルの料理・サービスが売り物のレストランである。
初めて店を訪れたとき、メニューの中から選んだのは、ステーキバーガー1,200円だった。グリルした牛肉パティをヴォリュームたっぷりに盛り込んだバーガーで、オニオン、レタス、トマトなどが添えられたひと皿。これにトロピカル・アイスティー、ホットコーヒー、アイスコーヒー、コカ・コーラから飲み物がひとつつく。
食べ終えたところへ日米ふたりのシェフが挨拶に現われ、いちばんのお勧めはロティスリーチキンですと伝えられた。
そこで2度目に店を訪れて迷わず注文したのが、Rotisserie Chicken Grilled Vegetables & Garlic sauceというひと皿。1/2ポーション1,800円と1/4ポーション1,400円があり、1/2ポーションがお徳と分りつつ、ヴォリュームを心配して1/4を選んだ。
しっかりとローストされた若鶏は香ばしく、骨のまわりの肉はとりわけ美味だった。ガーリックソースも思いのほか香りが強くなく、ほどよい香味を若鶏に添えていた。それに、ブロッコリ、パプリカ、たまねぎ、にんじん、いんげんなどの野菜がグリルにされてついてくる。そうそう、主菜の前のトマトクリームスープも穏やかな味わいだった。(山)

高円寺/ゑびす屋
らーめん(650円)
東京都杉並区高円寺北3-43-10
03-3339-6262
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とどまることを知らないラーメンブームは、次々と個性的なラーメンを生み出している。しかし一方で、オーソドックスなラーメンのおいしさを追求する店も増え始めているのも事実だ。そうしたラーメン屋は、ご主人一人やご夫婦で営んでいるケースが多く、市ヶ谷の「くるり」、以前ご紹介した初台の「一福」などは好例であろう。
去年暮れ、ラーメン激戦区の高円寺にできたこの店もそうだ。清潔感あふれる店にはもの静かなご主人が一人。「ラーメンを下さい」と頼めば、寸胴鍋からスープを小鍋にとり、ラーメンダレを注いで火にかける。次に茹で釜の近くに置かれた丼を取り、別のタレを加え、チャーシューを切り分ける。スープが温まるのを見計らって、麺を茹で始め、茹で上がる寸前にスープを丼に注ぎ、入念に湯切りした麺を入れて整え、海苔、ねぎ、シナチク、チャーシューをのせて完成だ。丹精で丁寧な仕事振りからもうかがえるように、煮干や鰹節系のすっぱい香りが立ち昇るスープはうまみが過多ではなく、中細のストレート麺がその滋味を絡めながらつるつると口元に滑り込む。一口目はあっさりと感じるスープだが、肉系の出しのうまみがしっかりと底支えしており、次第にうまみが増して、最後はコラーゲンで唇がべとつくほどだ。スープ、麺、具と、すべてに神経が行き届きながら、静かに主張する、万人に愛されるであろう、誠実な東京ラーメンである。(牧)
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溜池山王/ビストロけるぼぬーる
鶏のもも肉のロースト(1,500円)
東京都港区赤坂1-8-14かんべ土地赤坂ビル1F
03-3584-8174
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溜池の交差点からホテル・オークラ方面へ抜けてゆく横丁がいくつもあるのだが、そのひとつを曲がり、まさしく露地といってよい細い裏通りに店はある。夜は豆球の電飾がついているのでひと際目立つ存在ではあるが、昼はうっかりすると通り過ぎてしまうほど地味な店構えである。店名通りフランス料理店ではあるが、昼のランチにはフランス料理のソースをベースに洋食のコロッケやハンバーグを出す。海老のクリームコロッケにはアメリケーヌソース、ハンバーグにはフォンドヴォーベースのソースなどがそれである。デザートつきで1,500円とデザートなしで1,500円の2つのコースがある。
じつは、わたしはランチを食べる場合、店選びにひとつの法則を持っている。表通りの店より横丁を入った露地にある店を優先するのだが、表通りで1,000円以下は当たり前、そうかといって裏通りで1,000円以下のランチは、質の問題でほとんど当てにならない。狙いは、裏通りにありなgら1,200〜1,500円のランチで勝負しようという心意気のある店である。
「ビストロけるぼぬーる」は、まさしくそうした1軒。特製ハヤシライス2,000円など、ソースをつめすぎて、もう少し現代版の軽快さが必要と思われるひと品もあるが、ハンバーグや鶏もも肉のローストなどは、とても丁寧な仕事で仕上げられている。そして、ライスが美味しいことも特筆ものである。(山)

北青山/正(ゴカク)
昼定食(1,050円)
東京都港区南青山3-14-4B1
03-5413-0831
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優れた野菜料理を中心にしたコースで人気を得ていた三宿の「正(ゴカク)」が、2004年末、青山に移転した。夜は、おひたしや胡麻和え、胡麻豆腐など前菜の野菜小鉢料理から3品、旬の野菜のポタージュや煮物、生野菜オリーブ油かけ、焼き野菜などが揃った一の皿より2品、野菜と鳥のスープ煮、そばつくねと焼きねぎの椀物などの二の皿より1品、そしてご飯を選ぶ、5,000円のプリフィクススタイルを供して、すでに毎晩盛況である。一方昼は、その夜のダイジェスト版。ことに限定30食の昼定食は、実にお値打ちである。
たとえばある日は、精妙に火が通され、生き生きと香りを放つ菜の花の辛し和え、蒸してもなお葉の内側にみっちりと厚く密着したオネバが甘い、下仁田ねぎのぬた、青々しい香りが広がる小松菜のお浸し、素朴な甘みを持つそばの実のそばつゆ浸し、みずみずしい甘みがほとばしる柚子かぶらの5品から3品選ぶ小鉢と、上品な脂がのったぶりの照り焼きに、艶やかに香ばしく炊き上がった釜炊きご飯と味噌汁、おしんこといった布陣である。
主役はもちろん野菜で、かみ締めるほどに冬野菜の力強さと土の温もりが伝わってきて、清々しい気分にさせられる。この定食に、百合根饅頭や蒸し野菜などの料理が選べ、甘味がつく昼の野菜コース1,890円共々、背筋が正されるような、清廉な昼食である。(牧)
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吉祥寺/フォルテ
コンビネーションランチ(1,050円)
東京都武蔵野市吉祥寺本町2-11-9プラタタカハシB1
0422-21-6534
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ビルの地階にありながら、昼どきはその階段に列が出来るほどのステーキ専門店である。人気の秘密は1,050円のステーキランチにある。
カウンター席とテーブル席があるが、ここはやはりカウンター席に陣取って、目の前でステーキが焼かれるのを眺めながら楽しみたい。(おしゃべり好きの女性グループはテーブル席に座ってくれるので、カウンター席がとりわけ座りにくいということはない。)
値段を考えてもヴォリュームを期待するわけにはいかないが、尋ねてくれたステーキの焼き加減ぴったりに焼き上げてくれたステーキの脇に、野菜のつけ合わせとして同じく鉄板でジュージュー炒めたキャベツともやしをたっぷり添えてくれるのがいい。これにサラダとライスと味噌汁がついて1,050円なのである。
ちょっと変化球を楽しみたいというお方には、ハンバーグとハラミのステーキを組み合わせたオKンビネーションランチはいかがだろう。ハンバーグが50gとハラミのステーキが80gあり、片や練り肉のうまみを、片や噛んで味のあるステーキを同時に食べることになる。値段はこれまた1,050円である。
ちょっとばかし値がはり、1,000円グランプリからはハズれるが、わたしの一番のお気に入りは短角牛のサーロインステーキ3,150円。サーロインといえども、霜降りの脂が強くなく、牛肉本来の味が楽しめる。(山)

新橋/金太郎
肉一皿(700円)
東京都港区新橋3-19-8
03-3432-8929
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羊ブームが来ている。ジンギスカンの店が増え始め、モンゴル料理の店や仔羊肉を用意する焼肉屋、あるいは羊肉だけを焼く焼肉屋まで登場した。羊や仔羊はくさいから苦手なんていうのは過去の話だ。その人気のほどが伺えるのがこの店「金太郎」である。
細長くカウンターが伸びた店は、開店と同時に満席、やがて外には待つ人の列ができる。店に入り、上着を壁にかかったケースに終い、腕まくりをして臨戦態勢。千円グランプリ精神で望むなら、「肉一皿」700円とねぎ、モヤシ、たまねぎによる「野菜三品盛」600円、それに「いなきび飯」210円を頼み、自製ジンギスカン定食とすればよい。はや、目前の七輪に置かれたジンギスカン鍋には羊の脂が用意され、煙を立て始めている。脂がいき渡ったら肉の登場だ。アイスランド産だという仔羊の生肉は、観光客相手のジンギスカン店で見かける冷凍薄切り肉とは違い、厚さ1センチほどに切られた凛々しいお姿。一枚慎重に焼いてそのまま食べれば、肉は実にしなやかで特有の豊かな香り広がる。甘辛ダレにつけて食べれば、途端にご飯が恋しくなる。焼きのコツは、最初片面をさっと焼き、裏返してしっかり焼く。長方形の肉片なら4面を焼くのを忘れずに。まあそこまで慎重にならずとも、気楽に焼くのもジンギスカンの楽しみ。困るのは、合いの手に野菜をはさみながら食べ進んでいると、何皿でも食べられそうになって来ることである。(牧)
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虎ノ門/喜よし
さわら味噌漬焼き定食(1,400円)
東京都港区虎ノ門1-5-13
03-3501-5853
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新橋・虎ノ門界隈の昼めしどきのビジネスマンの活力は、かなりの迫力が感じられる。12時になったとたん、オフィスビルから飛び出したビジネスマンたちが、街並のあちこちで人波を作るほど。そのかれらが目指すのは飲食店ばかりではなく、街角に出店した露店の弁当屋にまで列が出来ている。
大半の人が安くて早く済ませられる店へ流れる中、ちょっとでも美味しいものにありつきたいと思う食いしん坊ビジネスマンは、表通りから横丁を入った露地に突き進んでゆく。
わたしも飲食店が居並ぶ繁華街で昼めしをとろうと思ったら、表通りの店はまず選ばず、横丁を入った露地を探索する。大通りに面して1,000円以下のランチを出す店は当たり前だが、横丁の露地で1,000円を超えるランチは質で勝負しているに違いなく、そこが狙い目なのである。
虎ノ門の「喜よし」は、まさしくそれにピタリッと当てはまる1軒である。小さな紺ののれんがかけれらただけのさり気ない店構え。献立表が入口脇に小さく出ていて、鮭赤だし御飯1,200円、さわら味噌漬焼き1,400円などと書かれている。
初回にはさわら味噌漬を、1週間後に鮭塩焼をそれぞれ食べたが、主菜にごはん、赤出し、新香とシンプルな定食の構成がいい。1品でも多くといった、ほとんど意味のない小鉢などつけないのだ。正午前に入店すれば、焼き立て、炊き立てが叶う定食が味わえる。(山)

年々人々の関心は、野菜に向けられているようだ。そんな世の動向に適応して、野菜を主役に据えた店が増えてきた。青山の「GOKAKU」や、コース全品を野菜だけで作る銀座の「六雁」。あるいは、赤坂のフレンチでその名も「オゥレギューム」や銀座の韓国料理「はいやく」、東北沢の「チャイニーズ・ベジ」など、野菜に力点を置く店が増えてきている。
コメと豆と野菜をテーマに、ホールフード理念を提唱する「ブラウンライス・カフェ」は、そんな時代を代表するカフェであろう。表参道の裏通りに建つビルの奥に位置し、天然酵母のパンと季節の菓子を作るパントリーと、料理教室、アロマグッズショップが併設されている。昼の人気は「季節の野菜せいろ蒸し膳」だ。注文するとまず前菜として、天然酵母パンにゴマと豆腐のペーストとりんご、ラデッィシュを載せたカナッペとかぼちゃのローストが運ばれる。やがて主役が湯気を立てて登場。直系二十センチほどのせいろをあけると、さまざまな野菜がぎっしりと詰められている。里芋、黄ピーマン、プチトマト、人参、ごぼう、玉ねぎ、れんこん、葱、インゲン、エリンギ、マッシュルーム、かぼちゃ、なす、蕪、ジャガイモと15種類。すべて皮付きのままで、齧ると力強い甘味、香り、えぐみが解き放たれる。根菜類の土の温かみ、茸類の香りが伝わる清々しい昼食で、玄米ご飯や根菜類の味噌汁と食べ進めば、健やかな気分になること請け合いである。(牧)
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六本木/Baggio
石釜焼きフォカッチャランチ(950円)
東京都港区六本木7-15-24河原ビル2F
03-5775-7599
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ピッツァは薪窯に限るという常識をくつがえし、ガス窯で見事なピッツァを焼き上げるピッツェリアである。ガスの火力で焼くと、どうしてもピッツァの生地は乾きがちなのだが、ガス窯で焼き上げたピッツァであるにもかかわらず、生地はしっとりと仕上がり、しかも小麦粉のうまみたっぷりの味わいなのである。
数あるメニューの中でも店の自信作は、ピッツァ・クワトロ・フォルマッジ1,500円、4種のイタリアチーズ(ゴルゴンゾーラ、モッツァレラ、タレッジオ、グラーナパダーノ)を盛り込んだピッツァで、焼き上げられた表面は、4つのチーズが溶けて流れて渾然一体、そこに蜂蜜の甘みが加わり、頬が落ちる程の美味しさである。このピッツァに太鼓判を押してもよいのだが、今回はランチのご紹介。
その名も石釜焼きフォカッチャランチ。まずは、ローズマリーとパルメザンチーズ風味の石釜焼きフォカッチャがサービスされる。これかなりのヴォリュームである。このパンと野菜サラダを食べているところへ運ばれてくるのがパスタ。ある日、わたしが選んだのは、鴨肉で作ったボローニャ風ミートソースで、パスタはフェデリーニだった。これが牛肉とはひと味違った味わいのミートソースで、フェデリーニとのからみ合いも申し分なかった。これにコーヒーがついて950円。これまた、太鼓判を押したい。昼はピッツァは焼かない。念のため。(山)

本町/一福
味噌ラーメン(670円)
東京都渋谷区本町6-6-4森田マンション1F
03-5388-9333
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冬になると味噌ラーメンが無性に恋しくなる。しかし味噌ラーメンは、東京では不利なのだ。元来、寒く、空気が乾燥した札幌が生んだおいしさであり、湿気が多く、暑い東京には向いていない。さらに最近の塩分油分旨味過多からの脱皮傾向もあって、ラーメンブームの中にあっても味噌ラーメンを看板に掲げる店は少ないのが現状である。しかし一方で、一部熱心な店主たちにより、東京ならではの深化を遂げているのだ。その一端を痛感させるのが、「一福」の味噌ラーメンである。
最寄駅から離れた住宅街の一角、こんな場所にお客さんは来るのかしらんと心配してしまうようなひなびた場所に、「一福」はぽつねんと佇んでいる。厨房に立ち、一人切り盛るのは、物静かな女主人。彼女の立ち振る舞いと同様に、「一福」のラーメンの魅力は、優しさにある。運ばれてくると、微笑んでしまうような甘い香りがふわりと立って、たまらず一口すすれば、味噌味も旨味も突出しない丸い味わいが、舌を包み込む。背脂が乳化してコクを深め、その味わいは食べ進むにしたがって深く、濃密になっていく。浮かべたクルトンのアイデアもお見事。濃密で温かみを感じさせる味噌のポタージュだ。一週間熟成させたという中太縮れ麺のコシは、信州麦味噌を使ったスープを力強く受け止め、一気に食べさせてしまう。旨味はしっかりしていながら、味わいが優しいので、食べ終わると気持ちが安らかになる。そんな味噌ラーメンである。(牧)
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神田/地酒や 鷹ばん
鮭親子せいろ重(950円)
東京都千代田区神田駿河台3-3
03-5281-4544
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「週刊朝日」の連載「ごはん魂」で見つけた1軒。この連載、カレーライスとラーメンのスペシャリスト小野員裕さんが、名だたる評判の店は極力避け、横丁にさり気なくのれんを出すような飲食店を取材しては、気合いの入った文章で紹介している。わたしの大切な情報源のひとつなのだが、その中で見つけた飛び切りの1軒なのである。
店名でおわかりの通り、居酒屋である。だが、店構えからして居酒屋然としておらず、店内も隅々まで清潔感に溢れている。清酒のリストを眺めるだけでも、ご主人の清酒に対する見識の高さと愛情の深さは十分にこちらに伝わってくる。ビジネスマン相手の昼ごはんもまったく同様なのである。
うなぎせいろ重を筆頭に、鴨ロース丼、ブリ丼など昼のメニューがずらりと並ぶ中、わたしが本来ならまず手を出さない“鮭親子せいろ重”を注文してみた。ごはんをせいろ蒸しにした上に、鮭の身といくらときのこが散らしてあるお重である。「手を出さない」というのは、鮭はお手軽すぎ、いくらは脂くさいものがほとんどだからである。
ところが、これが大違い。鮭は香りがあり、いくらは新鮮そのもの、ほんのり甘く味つけされたごはんと相性が滅法いい。添えられたごま豆腐も丁寧に作られたもの。味噌汁も、煮詰まったものとは違い、味噌の風味が豊かに生きているものだった。間を置かず、次にはブリ丼を目指して出かけようと思う。(山)

麻布十番/ぎん香
鰯丸干し定食(1,500円)
東京都港区麻布十番2-19-2
03-5439-6938
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日本の郷土料理や昔ながらのご飯。世の中はいま、そちらのほうへ流れている。例えば下北沢の「七草」や三宿の「GOKAKU」がそうだ。魚を一切出さず、豆や根菜類のいたわるような滋味を伝える料理を出す。西荻窪の「のらぼう」も同じく、しみじみとおいしい野菜や豆類の風味を前面に押し出した料理をそろえた店である。または、青山「上田米殻店」、白金「心米」など、米に一番力点を置いた店も増えてきた。今回ご紹介する「ぎん香」も、そんな世の流れを象徴する店ではなかろうか。
麻布十番や銀座で定評を呼んでいる自家製干物の「あん梅」の新店である。店に入るとまず目に付くのが竈、紅殻で焼き付けた竈と炭火の炉である。竈の火床には、薪がくべられている。数種揃う焼き魚定食から「鰯の丸干し」を注文した。すると店頭の干物売り場より、丸々太った鰯の丸干しが運ばれ、炉の火にかけられた。目前で焼かれていくのを待つ間に、つけ合わせが運ばれる。平目の造り、菜の花白和え、くわいの素揚げ、大根と豆腐の炊き合わせ、出し巻き卵など。なんと平目は、木製の氷式冷蔵庫より出されて盛られた。やがて真打登場。頭からバリッとかじれば、鰯は苦味と凝縮したうまみで答え、一粒一粒自立しながらほどよく固く、かみ締める喜びを思い出させてくれる甘みにあふれた薪炊きごはんが、そのうまみを受け止める。質素な食事こそが贅沢になってしまっている時代を、複雑な気持ちでかみ締めた。(牧)
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八丁堀/てんぷら みかわ 八丁堀店
ランチ天丼(1,000円)
東京都中央区八丁堀2-17-8
03-3553-4679
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てんぷらの「みかわ」といえば日本橋茅場町の露地に店があるのだが、すぐ近くの八丁堀に支店があることを知っている人は意外に少ないのではなかろうか。(八丁堀店のほかにもう1軒、六本木ヒルズにも支店がある)
八丁堀店も大通りには面しておらず、横丁を入った一郭にさり気なく店を構えている。夜は遠来の客が少なくなく、カウンター席とテーブル席はいつも賑わいをみせているのだが、昼のランチは近所で働く人たちが大事なお客様となる。
このご近所のビジネスマン、OLたちのために用意されたランチに天丼とてんぷら定食の2種があるのだが、どちらも1,200円である。26歳の若手てんぷら職人、谷口(やぐち)樹さんの手による天丼を例にとると、どんぶりに盛られたてん種はえびが2尾、きす、もんごいか、穴子が半身、それに野菜のなすとピーマンである。ごはんにかけられたどんつゆの量がじつに適量だから、どんぶりの底につゆがたまるようなこともなく、てん種にからんだつゆがしっとりとなじんだところを掻っこむと、天丼の醍醐味を手軽に楽しめることになる。
さて、ここからがお得なお知らせ。例えば、雨の降っている日に出かけると、この1,200円のランチ天丼が1,000円で食べられるのだ。雨の日はどうしても客足が落ちるところから考えついたサービスだそうだが、昼になっても雨がやまないとき、八丁堀まで足をのばすとなんとも嬉しい天丼に出逢えることになる。こういうサービスは大歓迎である。
※雨の日ではなくても、12時までに入店すると1,000円!!(山)

新橋/酔心
小いわし丼(840円)
東京都港区西新橋1-10-1
03-3501-1451
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この丼に初めてお目にかかったのは、「東京味の千円グランプリ おかわり」の連載時の取材で、「牡蠣雑炊」食べに出かけたときだった。牡蠣の滋味が滲み出た雑炊に目を細めていると、隣席の初老の紳士がなにやら見慣れぬものを食べているではないか。実にうまそうである。だがほかに食べているお客さんはいない。仲居さんにこっそり聞けば、「小いわし丼」という料理で、常連さんの隠れた人気料理なのだという。そこで後日、さっそく食べに出かけたのである。
「小いわし丼」は、身の丈七センチほどのた小いわしを、醤油ダレにさっと潜らせて、重に詰めた熱々ご飯の上に敷き詰めたものである。上に散らしてあるのは薬味のゴマと鴨頭ねぎに針生姜。寸分の隙間もなく整列した約20匹分の小いわしが、きらりと波しぶきのような銀の皮目を光らせて、早く食べろと誘ってくる。食べれば小さいながらも脂が舌に乗ってきて、ご飯を掻きこませる力十分である。出過ぎない醤油ダレもいわしの味を引き立て、ご飯にも染み込んで、食欲を後押しする。ゴマやねぎをまぶして、3〜4切れを一緒にして掻きこむと、もう箸が止まらない。後は一気呵成。いわしといっても、小さきゆえにうまみがくどくないので後口も爽快だ。
瀬戸内海の滋養を飲み込んだ広島直送のこの小いわし、毎日入荷があるとは限らなく、また数量にも制限があるため、必ず事前に電話でご確認を。(牧)
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銀座/タイガー食堂
さばしお定食(750円)
東京都中央区銀座1-15-12
03-3561-1871
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いま東京でどこが一番のお気に入りか、と尋ねられれば、真っ先に挙げるのが銀座である。1週間に1度は銀座に足を運んでいるのではなかろうか。1丁目から8丁目まで路地裏を含めて横丁の隅々まで歩いているつもりだが、それでもまだ新しい発見がある。銀座1丁目のタイガー食堂もつい最近歩いていて見つけた1軒である。
入り口の扉はガラスの引き戸で、これからしていまの銀座にしてはとても珍しい。店内はテーブル席と壁際のカウンター席に分かれ、奥の厨房がオープンになっている。壁に貼り出されてあるメニューを見ると、イカ刺定食、アジフライ定食、コロッケカレーなどなど、大衆食堂の定番メニューが並んでいる。
「なんにいたしましょう」と尋ねられ、「今日はなにがお勧めですか」と伺うと、「さばしお定食ですね」と言う答えが返ってきた。
「ではそれをお願いします」
しばらくして運ばれてきた盆には、さばの塩焼きにごはんと味噌汁、それに漬物というシンプルなセット。付けたしのような小鉢なんかがついていないところが潔い。そして、味噌汁がごはんのどんぶりと同じ大きさで、だいこん、にんじん、たまねぎ、豆腐がふんだんにはいっている。まずはさばに箸をつける。塩加減、焼き加減、抜群。身は脂がのって、うまいの、なんの。ごはんも豚汁も大合格。これで750円。昼夜同じなので、銀座の夜の食事としては、比類なき最高のコスト・パフォーマンスではなかろうか。(山)

六番町/根本
さばの味噌煮(850円)
東京都千代田区六番町1-2三井ビル2F
03-3262-8974
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子供のころは嫌っていたのに、大人になって好物になる料理のひとつが魚の煮付けだろう。わたしもDNAに隠れ潜んでいた日本人の意識が芽生えて、40を過ぎたころから俄然好きになった。特に秋から冬にかけては煮付けがうまい。町で煮付けの品書きを見つけると、ついふらりと店に引き寄せられてしまう。この店もそうして出会った店だった。しかも「さばの味噌煮」の前に「名物 根性の」と但し書きがなされている。そこまで訴えられたからには、入らずにはいられない。登場した味噌煮は珍しい筒切りである。厚切りのさばが、赤茶の味噌ソースをまとってどんと皿の中央に鎮座している。上にはねぎの小口切りとおろし生姜。箸をつければ力を入れるでもなく、はらりと身がはがれた。しっとりと煮あがった身に味噌の風味が程よく染みている。味噌ダレが甘すぎることなく、脂の甘みにぴったりと寄り添い、味は上品ながらも二つの甘みが重なり合って、ご飯が進むこと進むこと。よほど長時間煮込んだのだろう、骨を食べれば舌の上でほろほろと崩れた。長時間ながらも味が濃厚になりすぎることなく、身のしなやかさを保っているのは、出来上がりの理想を明確に描いて仕事をしている賜物だろう。さらに蜆が30個ほど入った大椀のしじみ椀200円をつければ、幸せな昼を迎えられることを約束する。
もうひとつの名物、塩さばの上に大根おろし、さらし玉葱と青ねぎ、針生姜をこんもりと乗せた、さばねぎ焼き950円もおすすめ。(牧)
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「ル・ジャルダン・デ・サヴール」が南青山から銀座へ移転してから何年も経つ。銀座の店は1階がバーカウンターになっていて、レストランは地階、これまたオープンキッチンのカウンター席が中心である。カウンター内でほとんど孤軍奮闘する中澤シェフの手際のよい仕事ぶりを目のあたりにしながら、美味しいフランス料理に舌鼓を打つことになる。
言ってみればシェフのみが厨房で立ち働くだけのひとりフレンチではあるが、その熟達した技に危ういところはみじんも感じられず、どの皿も実に堂々としたフランス料理に仕上がっている。
ディナーはそういうわけで申し分ない出来栄えなのだから、ランチもつい期待してしまうのだが、開店当初は人手の問題もあって、市販の、といってもエリック・カイザーの上質のパンを使ってサンドイッチなどをサーヴィスしていた。
それが最近、デジュネ(ランチ)をはじめたのである。わたしが出かけていったときにいただいたのは、鴨のコンフィ(脂煮)にしたものの身をほぐし、キャベツで包んだもの。鴨のもも肉のうまみがキャベツになじんで美味しいこと美味しいこと! これに自家製のパンとコーヒーがついて1,050円である。
カウンターで手軽に味わえるスタイルだが、味わいは本格派である。(山)

築地/つきじ高野
焼き魚定食(1,300円)
東京都中央区築地3-12-2
03-3541-6355
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「高野」は、ビルの谷間に挟まれ、ひっそりと佇んでいた。打ち水された石畳が10メートルほど伸び、玄関へとつながっている。
「うまい焼き魚が食べられそうだな」うれしい予感がよぎった。
構えが料亭風だからではない。品のよい風情と客を迎える温かみが伝わってくるからだ。
「いらっしゃいませ」
戸を開けると、きっぱりとした男性の声と柔和な女性の声に出迎えられた。声の主は、鍵の字のカウンターの中で働く板前さんと、サービスを受け持つ年配の女性陣である。席に着けば、「本日の焼き魚は、鯖とサンマとわらさ、あこう鯛の西京焼きとサーモンの味噌焼きです」と伝えられ、期待が高まる。
悩んだ末、鯖を注文すると、目の前に丸々太った鯖を取り出して三枚におろし、串を打ち、塩を振って焼き始めた。そんな光景もごちそうである。
やがて運ばれた鯖に箸を入れれば、湯気と香りが立ちのぼってたまらない。身はしっとりと皮はパリッと仕上がった焼き具合、上品な脂ののり、塩加減申し分なし。魚の勢いにご飯が少なくなると、「お代りはいかがですか?」お新香がなくなると、「どうぞ召し上がってください」と、間を置かない気配りも心地よい。
後日裏を返していただいた鮭の味噌焼きも、味噌の風味が鮭のうまみを引き立てていて、ご飯が進むこと。アラの小鉢、ご飯や味噌汁も上等。背を正したくなる当たり前の贅沢に感謝する、有意義な昼ご飯でる。(牧)
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ソムリエの田崎真也さんが、フランス料理の「S」に続いて、和食の「T」をプロデュース、2004年9月6日、愛宕に店をオープンした。レストランはサロンでありサーヴィスが大切という考えから店名を「S」にしたとのことだったが、今度の「T」はトーキョー、テーブルの頭文字をとったという。
店は港区愛宕、NHK放送博物館の前、愛宕神社のすぐ横にある。「T」は東京産の食材、食品に可能な限りしぼって、東京の食文化を発信しようというのがコンセプトである。(ちなみにこの場所は東京で初めて放送の電波が発信された記念すべきところである)
この「T」と「S」、偶然だろうが、プロデュースした田崎真也さんのイニシャルにもなっている。
さて、「T」でランチにサーヴィスされているのが、“T食”で、3品構成になっている。開店早々わたしがいただいたのは、まずとりあえずとして、なすの煮びたしとししとうのひと皿。続いて、味噌汁と呼ぶには野菜たっぷりの野菜汁。じゃがいも、冬瓜、ねぎ、にんじん、ごぼうが山盛り入っている。そして、めだいのづけ丼。野菜類は小平・調布産、魚は伊豆七島からの直送、米は八王子、酢、醤油はあきるの市で生産されたものといった具合にどれもが東京産。づけ丼の替わりに、八王子の香り鶏と町田の鶏卵を使った親子丼もある。3品セットで1,500円というお値打ち。酒や焼酎ももちろん東京産を揃えている。(山)

南青山/シターラ
ベジタリアン・カバブランチ(900円)
東京都港区南青山5-7-17小原流会館B1
03-5766-1702
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小原流会館の地下に新しいインド料理店ができた。白と黒に統一されたシックな店内は、インド料理らしからぬモダンさだが、それよりも店内にスパイス香が漂っていないことが、従来の店とは違う印象を与えている。
ランチは2種のカレーを盛り合わせたランチと、カバブ(焼き物)とカレーを組み合わせたランチの2種で、いずれもベジタリアンとノンベジタリアンが用意される。中でもおすすめしたいのは、ベジタリアン・カバブランチである。
ある日のそれは、クミンやコリアンダーの香りの奥から、ジャガイモのやさしい甘みやグリンピースの青々しい香りが広がる、直径6センチ程度の円盤型インド版コロッケ「ジャガイモとグリンピースのスパイス揚げ」と「赤いんげん豆の濃厚なカレー」の組み合わせであった。秀逸なのが日替わりで登場する豆カレーで、豆の甘みが素直に引き出されていて穏やかな気分にさせられる。複雑なスパイス香は刺激するが、利かせかたが精妙で、他店のように前面に出さず、豆の引き立て役に徹しているのである。ごろごろ入った赤いんげん豆だけでなく、レンズ豆も少量入っており、その崩れたデンプン質がとろりと舌を包みこむ食感はおいしいミネストローネを食べているようでもある。あとはミント、胡瓜と青唐辛子、青パパイヤの3種のチャツネでアクセントをつけ、香り米のバスマティライスやナンとともに優美に楽しむだけである。(牧)
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パリのチョコレート専門店として名高い「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」が表参道のハナエモリビルに続いて、2号店を丸の内にオープンした。
表参道はショーケースのみのチョコレートの販売だったが、新店にはわずか6席だがカウンターでチョコレートやお茶が楽しめるようになっている。店内にはいつもオペラが流れていて、ショコラ・ボンボンの名前を見ても、ボエーム、トラヴィアータ、オテロ、リゴレット、ファウスト、フィガロとオペラのタイトルロールが並ぶ。聞くと、オーナーのランクスさんが大のオペラファンなのだとか。
チョコレートケーキにもリゴレットと名付けられたフランボワーズのクーリ(ソース)をチョコレートケーキの上にのせたものを、オリジナルブレンドの紅茶840円とともにオーダーした。
フランボワーズの酸味がチョコレートの香りとマッチングしながら、口中に拡がっていったところに紅茶をひと口飲む。香り高い紅茶に出逢ったチョコレートが一段とうまみを感じさせ、なんとも至福のひとときである。デリス660円と呼ばれるアーモンドのビスキュイとチョコレートを組み合わせたケーキと紅茶の相性も抜群にいい。
また、ショコラ(ココア)もおすすめ。2004年9月に開店してまだ間もないのに、店内にはすでにエレガントな時間が流れている。(山)

時折ドライカレーが無性に食べたくなるときがある。ソースという液体に頼らない軽い食感と、ご飯や挽き肉に封じ込めたカレーの香りを思い出すと、居ても立ってもいられなくなる。ドライカレーは大別すると、ミートソース系とピラフ系の二系統があるが、後者最近で希少になりつつある。古いタイプの喫茶店などではまだ存続しているようだが、洋食屋ではとんと姿を見なくなった。そんな折、すぐれたピラフ系のドライカレーがいただけるのが、青山からす亭である。
この店は、初代が一昨年閉店した赤坂のからす亭で修行をし、のれん分けで青山に出した店が母体である。赤坂からす亭も「カラスライス」と名づけたドライカレーが名物で、常連である花柳会のお姐さんたち好みの、具を豪華に使ったものだった。青山からす亭のそれも、鳥もも肉やベーコン、マッシュールームを盛り込んだ、炒め飯スタイルである。カウンターで作る様を見ていると、フライパンを縦だけではなく横方向にも動かして、米が何度も空中を舞っている。その技が見せる通り、空気を含んでパラリと炒められ、ご飯一粒一粒にカレーの香りと油のコクが絡んでいる。さらにはマッシュルームやタマネギのうまみ、ブイヨンの滋味などがご飯にしっかりと染み込んでいて、しみじみとしたうまさもある。一さじ一さじと、食べるたびにおいしさがつのる、古きよき洋食屋の仕事が生きたドライカレーである。(牧)
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恵比寿/ル・レストラン・ドゥ・レトワール
ビーフストロガノフとフレンチピラフ(1,100円)
東京都渋谷区恵比寿1-14-8ベル・ツリー恵比寿1F
03-3473-1026
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恵比寿にある本格派のフランス料理がパスタランチをははじめ、これが大好評である。
オーナーシェフの三鴨さんが先頭に立ってお客様を席に案内しオーダーをとっている。その姿の颯爽として潔いこと。フランス料理のデジュネ(昼食)といったメニューのときにはなかった活気が店内にみなぎっている。
その三鴨シェフ自身がとりわけお勧めとして名を挙げたのが、毎日限定7食という「冷製カルボナーラ・パルマの生ハム添え」1,200円。カルボナーラはハムと卵とクリームがポイントの温かいパスタだが、半熟卵を盛り、生ハムを添え、クリームで和えたパスタを冷たい状態でサーヴィスする。クリーミーなパスタは暑い季節には避けたいものだが、これはクリームが重さを感じさせず、夏にはもってこいのパスタといってよい。
パスタランチは他にも磯つぶ貝のカレー風味・ほうれん草添え1,100円、フレッシュトマトとバジリコ1,000円、いわしとキャベツのアンチョビ風味1,000円、自家製ソーセージ添え・トマトクラシック1,200円とヴァラエティに富んでいる。中で最もフランス料理に近いパスタメニューが、ビーフストロガノフとフレンチピラフ1,100円。軽めだが香り高いブラウンソースと丁寧に調理されたピラフとの相性が素晴らしい。限定10食とのことだが、本格派のフランス料理だからこそ味わえるひと品といってよい。(山)

新宿/礼華
フカヒレスープ麺(1,300円)
東京都新宿区新宿1-3-12壱丁目参番館1F
03-5367-8355
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フォワグラやキャビア同様、フカヒレはまだまだ世間では高級食材のイメージである。
だがともすると、そのイメージゆえに商売に利用されてしまう。フカヒレを使用するだけで高価な価格をつけたり、本来は適正であるにもかかわらず、安価な値段に見せかけてお値打ち感を強調することもできる。実際はフカヒレといっても千差万別で、産地、種類、ヒレの部位、大きさ、加工業者などで価格が大幅に違うのである。であるから、フカヒレというだけでありがってはいけない。と、いつも自分を戒めているのだが、なかなか食いしん坊心がじゃましてしまうのが現状だ。
そんな世相を反映して、「礼華」の「フカヒレスープ麺」も人気の一品で、昼は大勢の客が注文して楽しんでいる。ただし、フカヒレ料理を店のひとつの自慢にしている店だけに、凡百のフカヒレそばとは一線を画している。フカヒレをこれ見よがしには入れ込まず、細麺をすすれば時折その食感にあたる程度だが、スープ全体にフカヒレならではのコラーゲンがいきわたるような味わいに仕立て、細いながらフカヒレ一本一本にも切れのいいスープの味がなじんでいる。こっくりとした甘味とうまみを持つスープ麺を食べ終わるころには、口の周りがねっとりと粘りつくといった具合。このフカヒレスープを餡にして、熱々ご飯にかけた「フカヒレスープ丼」も、もちろんおすすめしたい一品である。これからの季節、新宿御苑の緑に面したテラス席でいただくのも気持ちがいいだろう。(牧)
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京橋/オステリア オルティージャ
パスタランチ(1,000円)
東京都中央区京橋3-4-1TM銀座ビルB1F
03-3516-6842
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わたしの事務所へ寄せられた見知らぬ方からのファクシミリによって、この店の存在を教えられた。
「中央区京橋、メインストリートから少し奥まったビルの地下に、そのレストランはあります」
この“少し奥まったビルの地下”という説明にまず魅かれた。味を売る店は、概して表通りより横丁を入った小さな通りにあるものだ。そして、店内の様子を間接に記されたあと、次のような一文が添えられてあった。
「このレストランに初めて来店してきたと思われる人の、食事中の『笑顔』や、チェックが終わった際に見せるその表情からは、その方の食事の時間に、私も同じカウンターに並んでいられたことを、幸せに感じさせてくれます」
料理の紹介がひとつもなくとも、食事時の楽しい雰囲気が伝わってくるではないか。
思い立って出かけた昼、店を見つけるのにちょっぴりとまどった。1階の飲食店の玄関脇に地下への階段があったためである。期待を胸にの、その期待がいっぺんにしぼんで不安な気持ち狭い階段を降りていった。ところが、店へ入るとビジネスマンやOLがカウンター席に並んでランチを楽しんでいる。
気を取り直して、2種あるランチの中からパスタコースを選び注文した。ロケッタ菜のフリッタータにかぼちゃ煮やじゃがいもサラダのアンティパストからして丁寧な調理。フレッシュトマトとモルタデッラのスパゲッティは上出来、エスプレッソは秀逸だった。(山)

向丘/玻璃家 BOLIJIA
鮎とくらま山椒の鉄観音茶漬け(1,100円)
東京都文京区向丘2-11-8
03-5834-1255
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店名はガラスの家という意味だそうである。その名のとおり、界隈では一際目の引く、ガラス張り三階建ての一軒屋だ。入ってすぐの一階は厨房で、まずは忙しく働くコックさんたちに出迎えられ、二階と三階の客席に案内されることとなる。料理は、上海の家庭料理=家郷菜(ジャーシャンツァイ)を中心とし、そこにモダンな盛り付けの創作料理と多彩なスープが色を添える。また昼夜を問わず創意に富んだ麺料理やご飯料理のみの注文も可。例えばチャーハンは、黒豚のチャーシュー使った五目チャーハンにメレンゲ状に泡立てて火を通した白身を乗せた「ふわふわチャーハン」や、四川風の甘辛ダレで炒めた「回鍋肉チャーハン」など、他店では見かけない変わりチャーハンだが、十分練られていてしっかりと味が着地している。
そんなこの店に、今夏新たに登場したのが、「鮎とくらま山椒の鉄観音茶漬け」である。焼いた鮎を細かくほぐし、くらま山椒の実と微塵切りしたザーサイとあわせ、丼によそったご飯の上に乗せたお茶漬けだ。鮎の香りが立ち上る丼に熱々の鉄観音をかけて掻きこむ。口中に広がる、鉄観音の芳ばしさと甘さに鮎の香気とうまみ、ほろ苦味が合う。山椒の刺激のアクセントと塩気を補填するザーサイの役目もよし。レンゲが添えられるが、ここはかまわず丼を片手で持ち、箸でもってざぶざぶと掻き込むのがおいしい。(牧)
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築地/なかがわ
ランチ天丼(1,200円)
東京都中央区築地2-14-2
03-3546-7335
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茅場町「みかわ」で修業をはじめ、その後「みかわ」の昼のランチを主人早乙女さんに替わって担当、さらに八丁堀店と六本木ヒルズ店の店長として揚げ場に立った中川崇さんが、2004年7月に独立し、築地に「なあkがわ」を開いた。
早乙女さんはてんぷらの名人にして、若手の養成にたけた職人さんだが、その養成法が手っ取り早い現場経験主義である。ランチの天丼、てんぷら定食でいいから、てんだねを8種類ほど、1日50人、1ヶ月1,800人、1年で2万人、3年で5万人ほどの客にてんぷらを揚げ続ければ、てんぷら職人として一人前になれるのだという。
この経験をとっくのとおに済ませてしまっている中川さんは、それでも未だ30歳代だが、東京の名代のてんぷら屋の主人の揚げるてんぷらに勝るとも劣らない。師匠早乙女さん譲りの穴子などは、ひょっとして東京でもトップクラスのてんぷらかもしれない。「なかがわ」では、昼のランチ天丼を1,200円で出している。えび2尾、きす、いか、穴子1/2、なす、ピーマンが、丼ではなく重箱に所狭しと並んでいる。どんつゆのかかり具合からして細かな神経が行き届いた天丼で、立派なお値打ち天丼である。ランチの定食も同じ値段というのが嬉しい。
昼からちょっと気張っても構わないという人には、活えび、きす、いか、はしらのかき揚げが並ぶ上天丼2,940円がある。(山)

南青山/イーリャ ブランカ
フェイジョアーダ(1,850円)
東京都港区南青山3-4-7第7ビル1F
03-3401-2737
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暑い夏には暑い国の料理を食べる第二弾。今回はブラジル料理である。ブラジルを代表する料理フェイジョアーダは、黒豆と牛や豚の内臓類を煮込んだブラジル版「煮込み」である。入っているものは内臓類だが、居酒屋の煮込み同様に味はまろやかで、奥深いうまみが人をひきつける。ご飯との相性も抜群。都内のブラジル料理店では必ず頼んでしまう、飽きのこない味である。なんでも植民地時代の奴隷たちが、捨てられていた豚の足、尻尾、耳、臓モツなどを黒豆と煮込んで食べたのが始まりとされているらしい。国土の大半が熱帯気候であるブラジルで、手軽にさらりと食べられ、しかも栄養価の高い料理として愛用され、日曜日の昼に家族で集まって食べる習慣があるそうである。
東京にも数多くのブラジル料理店があってフェイジョアーダがいただけるが、その多くが夜のみの営業で、長年昼に気軽に食べたいという願望があった。そんな折ふと青山の裏通りで見つけたのがこの店である。白壁の洞窟を思わせる小体な店内の厨房に立つのは、ブラジルが大好きだという女主人一人。フェイジョアーダは真っ黒なシチューに肉塊ごろりところがる迫力の姿だが、一口食べれば心安らぐような豆の甘みが広がる。そこに内臓類やブラジル風ソーセージの食感が加わって、なんとも楽しい。あとは、唐辛子入りのピメンタソースで辛味をつけ、芋の粉のマンジオカで風味をつけ、ご飯とよくよく混ぜて食べれば一気呵成。気がつけば暑気は吹き飛んでいるはずである。(牧)
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2004年3月、中目黒にオープンした小粋なイタリア料理店。場所は山手通り東山1丁目交差点を入った先、フランス料理店「コム・ダビチュード」の隣のビルの2階にある。店内は、鉄板ステーキ店のようなカーブしたカウンター席が中央にあり、その木材の質感が硬質でシャープな感じの内装に温かみのあるアクセントを与えている。カウンター席からガラス張りの厨房が覗けるようになっていて、清潔感も申し分ない。
注文をつけるとすれば、唯一店名の表記。道化師を意味する<パリアッチョ>をイタリア語表記だけで、どれほどの人が読め、正しく言うことが出来るだろうか。ただちに、ショップカードに手書きでよいから、「パリアッチョ」と書くべきではなかろうか。確かに、料理人も道化師と同じく、高度な技術に裏打ちされたプロフェッショナルな一芸で客を楽しませるアルチザンではある。
この店のワンプレートランチは質が高い。わたしが出かけた日は、サルシッチャと呼ばれるスパイスとハーブをきかせた手作りソーセージを中心に、じゃがいもやレンズ豆といった野菜を周りにあしらったワンプレート。
このワンプレートの前に良質のサラダが出て、自家製のパンもおいしい。デザートこそ含まれてはいないが、コストパフォーマンスの高いランチといえる。スパゲッティのランチもグラム数によって2種用意されている。(90g/1,000円、150g/1,500円)(山)

麻布十番/海南鶏飯食堂
海南鶏飯(小750円/大900円)
東京都港区六本木6-11-16中銀マンション
03-5474-3200
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暑い日が続くと、つい冷たい料理をと考えがちだが、暑い国の料理を食べるのもいい処方箋になる。たとえば年中熱帯性気候に包まれているシンガポールの庶民食、海南鶏飯はいかがだろう。中国南東部の海南島から伝わったとされる家庭料理で、鶏スープで炊いたジャスミンライス(最高級品とされる長粒米。籾の色がジャスミンの花のように白い)に、鶏スープで茹でた鶏胸肉を載せたご飯料理である。添えられるのは、口休めのきゅうりとトマト、それに甘い醤油、チリ、生姜の三種ソースだ。鶏をスプーンで切り、好みのソースをかけてご飯とともに食べるのが流儀であるが、僕はまずソースをかけずに一口食べる。鶏の穏やかな滋味とジャスミンライスならではの香りと甘みが手をつないだ淡い味わいを、ゆっくり咀嚼しながら気分を落ち着かせ、外気の暑さを忘れようという算段である。次に生姜ソース、チリソース、醤油ソースの順にかけていき、味のアクセントを楽しむ。ソースを混ぜてもよい。そして時折かたわらの鶏スープを飲んでは初心に戻りなどと楽しんでいると、瞬く間に食べ終えてしまう。後味がきれいなので気分は爽快。かつ滋養もあり、最適の盛夏食である。テラス席もあるので、わざと強い日ざしに照らされながら食べるのも一興だ。
欲をいわしていただければ、以前シンガポール大使館員の強い要望で月曜日のみ出していた、鶏もも肉バージョンの復活を望む。(牧)
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富士見台/源烹輪
ピータンと大根・水菜の冷やし和え麺(800円)
東京都中野区上鷺宮4-16-10セイワビル1F
03-5987-3507
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2004年4月からの新番組で毎週月曜日夜7時、フジテレビ系の「う!ウマいんです。」にレギュラー出演している。毎回フジテレビのアナウンサーが飲食店へ出かけ、その店の料理をレポートし、そのVTRをみながらスタジオにいる者が、行きたいか行きたくないかをボタンを押して返答するというもの。
そのある回に西武池袋線富士見台駅近くの「源烹輪」が出た。料理は冷製フカヒレそば。わたしはVTRをみながら、素材を重ねてはいるが、持ち味を素直に抽き出している調理に見え、かなり行きたい店としてボタンを押したのだが、店名はどこか聞き覚えのある名前だった。
帰宅して「東京1000円味のグランプリ おかわり」をみると、なんとマッキー牧元さんがこのひと品を紹介しているではないか。数日後、これはオンエア前に食べておかなくてはと、店へ飛んでいった。食べてみて、フカヒレの存在感はあるものの、素材を重ねた分、味が重くなっていた点が予想通りというか、気になる点だった。
そのときメニューで、次回にはぜひと思ったのが、ピータンと大根・水菜の冷やし和え麺。1ヶ月後に再訪し、これを注文して食べると、予想をはるかに超える味わい。大根と水菜と冷やした麺をつないでいるのがピータンの香りとコク。値段も800円というお手頃なもの。夏期限定のひと品だが、素材からして冬になっても通用する冷麺ではなかろうか。(山)

早稲田/松庵
昼の御膳(1,050円)
東京都新宿区早稲田鶴巻町556
03-3202-4007
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夏にそばにとって不利な時期である。秋から冬に収穫されたそばは、夏にまで保管されると、命である香りが薄まり、つなぎも弱くなってしまう。厳選したそばの産地と厳重に保管されたそばの実を選ばないと、頼りないそばしか打てなくなってしまうからだ。しかし一方で皮肉なことに、熱い日々が続くと、そばの清涼なるのど越しが恋しくなってくる。ゆえにそば好きは、夏になると葛藤の日々をすごすことになるのだ。
そんな葛藤の日々を開放してくれるそばに出会った。場所は早稲田。割烹松下が営むそば屋「松庵」である。昼の御膳と題されたある日の昼定食は、まず和風のシメジのソースがかけられた香ばしいメカジキのフライと、芽カブの和え物、お新香、じゃことシソの和えご飯が出される。少量ずつ出される皿は、いずれも松下譲りの誠実な味わいで、穏やかな気分を運んでくれる。食べ終えておなかが温まったところで出されるのが、小ぶりの丼に入れられたそばだ。冷たいつゆをはり、大根おろしをのせた、冷製かけそばともいえる一品で、なんとも涼しげな光景である。細打ちのそばをつるると手繰れば、草のようなそばの香りが鼻に抜けていく。歯を押し返すような、もっちりとした本来のそばのコシも充分。そんなそばを、淡く味付けをした、気品あるダシ汁が盛り立てる。デザートの青梅のシャーベットも上等。そばに盛夏の季節感を盛り込んだ、お値打ちの定食である。(牧)
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銀座/王味
豚足そば(750円)
東京都中央区銀座4-13-11
03-3541-8780
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「丸ビルを食べる」「浅草を食べる」に続くシリーズ第3弾「J.C.オカザワの銀座を食べる」(晶文社刊)が出た。
例によって、“名店200選”がメインであるのだが、銀座の1丁目から8丁目までを隅から隅まで歩き、食べ尽くしている感があるほどに飲食店が数多く取り上げられている。
褒めるばかりが能じゃないと、飲食店を愛するが故の厳しい注文も多く、ニセのわさびを堂々と使う和食店を徹底的に追求するあたりは、それに賛同する者として大いなる拍手をおくりたいと思う。
それにしても、すし、天ぷら、そば、うなぎ、鍋、おでん、ラーメン……和食、洋食、フランス料理にイタリア料理、中国料理、さらに酒亭、ビアホール、カフェ……と、著者の好奇心探究心と情熱的な胃袋はとどまることを知らない。そして、銀座は日本の飲食を総ざらいできる唯一無二の美食地帯であることを再確認した。
当然、銀座の大好きなわたしでも知らない飲食店が何軒も登場する。その中で歌舞伎座並びの中華料理店「王味」の豚足そばは著者が敬愛してやまないひと品として推奨されている。
早速、その豚足そば目掛けて食べに出かけたのは言うまでもない。ねぎのみのシンプルな中華そばの上に豚足がまるごと1本。よく煮込んで味をふくんだ豚足のうまいこと。この豚足にビールをあわせたくなった。(山)

野方/伽哩人
香辛鶏伽哩(900円)
東京都中野区野方1-5-17
03-3387-0598
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「また店ができたのか」。1年前にできたその店を、僕は冷ややかな目で見ていた。なぜなら、不便なその場所は、何度も店ができては消えていったからだ。ところが次第に満席になっていくではないか。そこでようやく偏見と重い腰を捨てて店を訪れることにした。
清潔感あふれる店のカウンターに座ると、目の前には、カルダモン、クミン、クローブ、粗塩などが入ったビンがずらりと並んでいる。そして店内を包むは刺激的な香り。俄然気持ちが前のめりになって、チキンカレーを頼めば、黄河黒米を一割入れて炊き込んだ小豆色のご飯に、黒に近いこげ茶のソースがかけられ、鶏肉の一塊がごろんところがった皿が運ばれた。余計な要素はそぎ落とした、実に意欲的なカレーの姿である。さらさらのカレーソースをご飯に絡めて口に運べば、まず強烈なクローブの甘苦い香りが飛び込んできて魅了する。続いて酸味とほろ苦味、複雑な香りと柔らかな甘みが顔をのぞかせる。そして最後に辛味が暴れだす。だが、どのの要素も突出することなく、一丸となって五感を揺さぶるのである。もっちりとした食感で一粒一粒の自立感がある黒米入りご飯も、スープ状ソースをさらりと受け止め、相性が良い。考案が見事に着地して、浮き立つことなく馴染んでいる。カレーだけではなく、前菜の豚肉のコンフィ500円やデザート類も秀逸であるから、様々な楽しみ方ができる店でもある。
自らの偏見を猛省した、家から1分の美味であった。(牧)
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2004年4月、日本橋高島屋の飲食スポットが大改装となり、六本木ヒルズの「ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション」がサロン・ド・テを出店した。
赤と黒を基調とした店内は「ラトリエ」のイメージの延長上にあるが、テーブル席やブース席が中心で、寛げる空間になっている。もちろん、カウンター席も用意されている。
メニューの中で最も興味をそそられ、選んで味わったセロリ、ニンジン、トマト、メロンの100%ミックスジュース945円をご紹介したいところだが、今回はカニとアヴォカドとフルーツトマトのサンドイッチをご案内したい。
ジョエル・ロビュションの名作に、カニとアヴォカド入りトマトのミルフォイユという前菜がある。カニとアヴォカドそれにりんごなどを加えてサラダ状に仕立て上げ、トマトをフィユタージュの替わりに使い、ミルフォイユに見立てたひと品である。この素材の相性が発想の原点となったと思われるサンドイッチで、味わいのバランスが見事にとれた名品に仕上がっている。つけ合わせのフライドポテトの揚げ立ての美味しさも文句なしである。値段の張るサンドイッチだが、お値打ち十分といってよい。
もうひとつ、伊達鶏と甘いニンジンのホットサンド1,575円があるが、こちらは少々味付けが濃く、途中で口が飽きてしまうのが残念。(山)

上野/桜や
カレーライス(600円)
東京都台東区上野桜木1-10-15
03-3821-2398
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めったにお目にかかれなくなった、普通のカレーである。場所は根津の言問通り。激しく道行く自動車たちとは無縁の佇まいで、大正初期に立てられたという木造二階家が、ゆるりと時を重ねている。「定食」と記された白い暖簾をくぐり、ガラス戸をあければ、「いらっしゃいませ」と威勢のいい声に出迎えられる。浅香光代さんの口調にも似た、気風のいい口回しで一人店を切り盛るのは、ご主人でもあるおばあちゃんだ。
「カレーライス」は、薄茶色のどろりとしたカレーで、たっぷり盛られたご飯に寄り添って、なみなみとかけられている。一口食べれば、甘くやさしいうまみが広がって、あとからちょっぴりカレー粉の香りと刺激が顔を出す。日が落ちかけた帰り道、どこからかカレーの匂いが漂ってきて、「ああ自分の家もカレーだったらいいのになあ」と、足早になった懐かしい思い出がよみがえる。体を活性させるようなインドカレーとは違って、安寧を呼ぶ味だ。具は、煮込まれて煮込まれて、ひき肉状態まで小さくなった豚ばら肉とたまねぎ。そのシンプルさもまたよしである。
気がつけばソースをかけすぎてご飯がやや余り気味だ。その様子を見たおばあちゃんがすかさず、「ソースおかけしましょうか」と声をかけてくれた。もちろんお願いして、最後までゆっくりと楽しんだ。マスヒロさん流にいわさせていただければ、シェフの味ではなく、シュフの味に近いが、味、サービス、空間の三者が共鳴した、希少の味わいである。(牧)
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恵比寿/Pot-Bouille
仔羊のクスクス(1,500円)
東京都渋谷区恵比寿南2-7-4クオリア恵比寿サウス1F
03-3791-8845
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店のカードには、BISTROT A VIN Pot-Bouilleとあって、日本語表記がない。訳せばゴッタ煮。ワインの飲めるビストロとでもなるのだろうか。ゴッタ煮はビストロらしい店名としても、ビストロとはそもそもワインなどの酒を飲ませるところだから、ビストロ・ア・ヴァンなどとわざわざ呼ばなくともよさそうなものだが、15年ほど前からパリでワインのグラス売りを売り物にしたビストロが出現し、この名前が目立つようになった。それを店名に添えたフランス料理店で、黒板に良質廉価のワインが並んでいるが、グラスワインを売り物にしているわけではない。
やはりこの店の目玉はビストロ料理にある。前菜にはパテやイワシの料理が並び、主菜には手作りソーセージやステーキや煮込み、クスクスなどヴァラエティに富んでいて、選ぶのに一苦労するほどである。
この前菜と主菜を組み合わせたランチがお値打ちである。ある日わたしが選んだのがガスパチョと仔羊のクスクス。ガスパチョ400円はピーマンの辛味を利用したトマトベースの冷たいスープでスペイン生まれ、クスクスは挽き割り小麦を蒸し煮にした北アフリカからフランスに伝わった料理。フランスの伝統食を食べていないのに、フランスの香りが存分に楽しめるところがこの店ならではだろうか。かつて一世を風靡した「オーバカナル」のスタッフが厨房で料理を作っている。友だちと連れ立っても、ひとりで出かけても楽しめる店である。(山)

浅草/さくま
牛煮込み(500円)
東京都台東区浅草3-4-2
03-3876-4752
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下町の居酒屋にとって欠かせぬ料理のひとつに「煮込み」がある。わたしは品書きに見つけると、真っ先に頼む。なぜなら煮込みは、いい居酒屋のバロメーターであり、店主の心意気が詰まっているからだ。煮込みは、新鮮な内臓や肉類を入手し、丹念に下処理と下茹でをし、長時間かけて煮込む。つまり、手間をかけてもおいしいものを食べてもらおうという、店主の思いが煮込まれているのだ。さらに味わいや形状も千差万別で、味噌味、醤油味、豚、鳥、牛の内臓、白色、焦げ茶、スープ状態、汁気なしと、店主の考えが込められている。
そんな下町居酒屋で三大煮込みと称されるのが、北千住大はし、月島岸田屋、森下山利喜だ。人によっては、門前仲町大阪屋、立石宇ち多を入れて五大煮込みと呼ぶ。だが実は、忘れてはいけない地区が浅草である。
場外馬券場近くに並んだ居酒屋の店頭から流れる煮込みの匂いに始まり、千代乃家、喜美松、三ちゃんなど、煮込みの激戦区なのである。中でもお奨めしたいのがさくまである。大振りの牛すじとコンニャク、豆腐が焦げ茶色のどろりとした汁にごろごろと入った煮込みで、一口食べて感心するのは、奥深さと上品さ。上質の牛すじならではのゼラチン質がうまみとなり、脂が甘みになって汁に溶け込み、舌にまろやかにからみつく。しかも濃い味ながら後味がキレのいい上品さ。まさしく和製ビーフシチューと呼びたい代物で、酒にも合うのはもちろん、ご飯も恋しくなる煮込みである。(牧)
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銀座/流石
ひやかけ(1,000円)
東京都中央区銀座1-19-12理研ビルB1
03-3567-0012
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「流石(さすが)」とは、飲食店のネーミングとしては、ユニークにして大胆である。ところが店主に店名の由来を聞いて納得した。
修善寺のそばの名店「朴念仁」の店主石井仁さんの下で修業したそば打ち職人を連れての開店ということで、「石」井の「流」れを汲むところから「流石」と命名したというのだ。
「朴念仁」を修善寺に開くまで、石井さんは神田で「いし井」というのれんを掲げていた。そのそばは極く極く薄く細いもので、よくぞこんなに繊細なそばが茹で上げられるものだと、はじめて味わったとき驚いたものである。そばつゆが甘過ぎず辛過ぎず、それでいて香り高く凛としてキレがいい。極細のそばをこのつゆにつけては手繰る妙味は格別のものだった。
修善寺に移ってもその仕事は変わることなく、江戸前の小粋なそばは修善寺でも健在だった。ただ、思い立ったときに出かけられないのが、なんとも残念だった。
その気持ちをすっきりと解消してくれるに十分なのが「流石」である。この季節ならまずひやかけからはじめるのがいい。添え書きに、冷たくひやしたつゆをたっぷり「ぶっかけ」で、薄味のつゆは最後の一滴までお飲みいただけます、とある通りの楽しみ方が出来る。もう一杯いけるなら、焼きなすの温かいそば。焼いて皮をむかれたなすの香りがかけと見事にマッチして夏ならではの逸品である。(山)

板橋/栄児家庭料理(ろんあーる)
蒸しナス(大1,000円、小800円)
東京都板橋区板橋3-34-12
03-3961-9188
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夏が近づくと様々な症候群が出る。冷やし中華症候群、カレー症候群、ニガウリ症候群、四川料理症候群・・・。中でもカレーと四川が厄介で、毎日食べずにはいられなくなるほどの重症だ。この店もそんな重症時に発見し、とりこなってしまった店である。
場所は駅から外れた、寂しい場所にある。やや不安になりながら定番料理を注文すれば、驚きの連続がやってきたのである。細く裂かずに薄切り鶏を使った棒々鶏は、ねぎとオレンジ色のソースで和えられて、花椒(中国山椒)がさわやかに香る。キャベツを使わず、ピーマンとねぎによる回鍋肉は、締まった豚ばら肉の脂が甘く、ソースと調和する。四川ザーサイ、生姜、ねぎを載せ、熱した山椒油をかけた中国風冷奴。あっさりとした味わいの中から辛味が顔を出す麻婆豆腐など、いずれも洗練はされていないが、温かく親しみをよぶ味わいなのだ。聞けば女主人が四川の家庭料理をそのまま再現しようと開いた店で、、自分が習ったレシピ、現地の香辛料を忠実に使っているのだという。
そんなこの店の一番のお奨めが蒸しナスである。蒸したナスの上に、花椒、青唐辛子、焼きピーマン、ねぎ、ゴマ、にんにく、豆板醤、醤油、ラー油、砂糖、生姜などを混ぜ合わせたタレをかけたもので、ナスの香りと甘みに強烈な辛味と痺れ、それに甘味、塩気などが絡みあう。食べるごとに複雑で奥深く、舌がとらわれていく。そして症候群はさらに悪化していくのである。(牧)
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神保町/インドカレー・カーマ
チキンカレー(850円)
東京都千代田区猿楽町1-2-3
03-3233-8787
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店名が「インドカリー・カーマ」でなく、「インドカレー・カーマ」というのがいい。そのことをチキンカレー(辛口)を食べるとすぐに納得する。メニューには、サラッとしたスープ状の辛口カレーと添え書きがある。つまり、洋食屋のカレーライスではなく、本格のインドカリーを目指したものではあるのだが、あくまで日本人の口に合った、つまりは白いごはんと相性のよいカレーであるというわけだ。
白い皿にごはんが平たく敷かれ、サラリとしたカレーソースがひたひたに流され、上には鶏とじゃがいもが添えてある。カレーは辛いというより香り高いスパイシーなソースで、ふっくらと炊き上げられたごはんと見事にマッチする。鶏にもじっくりと味がしみ込んでいて、カレーの味わいを一層深いものにしているし、また、じゃがいもの甘みとうまみもこのカレーにまろやかさを加えている。最近味わった中でも出色のカレーである。
こってりとしたひき肉のカレーと添え書きのしてあるキーマカレー850円は、中辛とあるもののひき肉の味わいで甘みが十分に感じられるカレーに仕上がっている。これも秀逸。
さらに、再度訪ねたときに注文したサブジ850円はたっぷりの野菜と鶏肉の少し甘口のカレーとある通りだが、野菜自身から出た自然の甘みだから嫌味がまるでなく、その甘みがスパイスの中で存分に活かされている。甘口だがあとをひくカレーだ。(山)

赤坂/赤坂一龍 別館
ソルロンタン(1,500円)
東京都港区赤坂2-13-17シントミ赤坂第2ビル
03-3582-7008
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仕上がりが雪のように白いために「雪濃湯」と名づけられたソルロンタンは、牛の足の骨や臀部の肉、あばら骨、足の筋肉、牛舌、肺、脾臓などを1日以上煮込んだ、栄養に富むスープである。内臓類と聞くと、臭みのある癖の強い味を想像なさる方もいるかもしれないが、その実、透明感があって淡い、優しい味わいのスープである。一龍別館はその雪濃湯の専門店。注文するとまず運ばれるのが韓国の常備菜で、白菜キムチ、カットゥギ(大根キムチ)、モヤシナムル、青菜お浸し、韓国海苔、大根細切キムチ、玉子焼き、小魚、韓国風きんぴら、厚揚げの辛し和えなど10種類の小皿(おかわり自由)がテーブルいっぱいに並べられる。そしていよいよ主役の登場。野菜、肉、韓国春雨タンミョンが入った白濁スープを一口のめば、ほとんど塩気はなく、ほのかにミルキーな甘みがひろがる。そこに胡椒を一振り、塩をふたさじ加えればさらにうまみが深くなって頬が緩む。あとの味付けはお好みしだい。わたしのやり方は、ごはんを入れ、海苔をちらして二口。次に大根細切キムチをを入れて食感のアクセントを楽しみ、タテギ(調理用合わせ辛味噌)をもらって味の変化をつける。最後は、カットゥギの汁を入れて辛味でしめる。辛味を入れても、スープの土台が力強いため、滋味は揺るぐことなく、舌の上にしっかりと広がっていく。
24時間営業という点も嬉しく、昼食や夕食だけでなく、酒宴のしめや朝食にも重宝する貴重な店である。(牧)
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浅草/グリル・グランド
ウスカツ(1,680円)
東京都台東区浅草3-24-6
03-3874-2351
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2003年末「J.C.オカザワの浅草を食べる」(晶文社刊)とタイトルされた1册のガイドブックが出版された。その本の帯にあるように「浅草の隅から隅まで食べつくし」た画期的ガイドである。名店百選がメインであるのだが、辛口批評がふんだんに盛り込まれてある。それが決してイヤ味になっていないのは、近頃流行のただケチをつけるだけで食事をちっとも楽しんでいない感想文のたぐいの案内と違い、浅草とその飲食店を心から敬愛する著者の姿勢がどの行間からでもうかがえるからである。
洋食ジャンルで著者が絶讃している1軒が、観音裏浅草3丁目にある「グリル・グランド」。ミックスフライ(1,800円)の真鯛と海老フライサンドをとりわけ褒めている。真鯛は秋まで待つこととし、浅草の友だち2人と誘い合い出かけた。選んだメニューは、海老フライサンドイッチ1,890円、カレーライス1,360円、オムライス1,050円、それにウスカツ(カツが2枚、スープ、ライス、コーヒーがつく)1,680円の4品。どれもこれも予想以上期待以上の味だった。海老フライがジューシーに揚げられたサンドも、洋食屋らしいトロリとしていながら香り高いビーフカレーも、手間を考えればコストパフォーマンスが極めて高いオムライスも、みな納得のゆく味わい。驚くべきは豚肉を薄くのばして揚げたウスカツ。肉と衣のバランスのよさ、揚げ切りの見事さ、肉が厚くなくともカツの醍醐味が楽しめる逸品。ウスカツは往年の洋食屋の伝統のひと品でもある。(山)

成城/中国料理 桂花
ニラとクコの実の薬膳粥(1,200円)
東京都世田谷区成城6-4-13成城フルールビル2F
03-3483-8581
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「はあ」。お粥を食べると心が安らぎ、思わずこんな吐息が漏れる。中でも中国粥には、格別その力が宿っているように思うのだがどうだろう。日本でのお粥は、病人食や清貧、食欲不振時の食事といった印象もあるが、中国人にとってのお粥は、、美味を運び、栄養に満ち、体を健やかにする、、毎日に欠かせない食事として深い関係にある。宋代の詩人陸遊は、丹念に作ったお粥は寿命を延ばすといい、蘓東坡は、お粥を美味しく食べたあとの余韻は、妙なる言葉では表せないといったという。そんな中国粥こそ、現代人にとって、まさに必要とされる料理なのではないだろうか。
そのことを痛感させるのが桂花のニラとクコの実の薬膳粥だ。ゆるゆると米粒が二分の一くらいになるまで煮込まれた粥に、クコと刻んだニラを入れ、溶き玉子で閉じた粥である。米粒が花が咲いたような状態になった熱々の粥をゆっくりとすすれば、米の甘みと鶏スープや貝柱の滋味が溶け合って、ゆっくりと舌を過ぎ、喉に落ちていく。そこに溶き玉子の優しい甘みが加わって、さしづめふぐやすっぽんなど、上質な雑炊を食べているような気分にもなる。時また折香るニラが絶妙なアクセントで、あくことなく、最後の日とさじまで食べさせてしまう。「はあ」。気がつけば、胃袋は温かく、体は上気しているのに心は静まり、自然と口から安堵の吐息が漏れているはずである。(牧)
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ひばりが丘/たなか
手打ち細切りうどん(500円)
東京都西東京市ひばりが丘1-15-9
0424-24-1882
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いまから20年ほど前、わたしが「東京・味のグランプリ200」を上梓するため、すし、そば、てんぷら、うなぎ、とんかつ、ラーメンの6つのジャンルの飲食店を食べ歩いていたとき、カルチャーショックを受けたそば屋の1軒が、環状7号線沿いにあった練摩の「田中屋」だった。東京生まれ下町育ちのわたしが、そばの香り高さに出逢って圧倒されたのだった。それまでそば」といえば、辛いつゆにそばをちょいとつけて、小粋にリズミカルにたぐるものとばかり思い込んでいたものだから、そばに香りなど求めたことがなかったのである。ただし、そばのヴォリュームは滅法少なく、値段は破格の高さだった。
この「田中屋」主人が後年店を人に譲り、あらためて民家を改造して開いた小さなそば屋がひばりが丘の「たなか」である。一転して良質廉価のそばを打つ店として、すぐさま評判をとった。もりはもちろんだが、かけそば500円のそばとつゆのうまさは東京随一ではなかろうか。
この「たなか」で夏にふさわしいメニューのひと品が、無漂白の手打ち細切りうどんである。無漂白の小麦粉だから色がやや黄ばんでいるが、艶があってなんともみずみずしい。これを凛とした涼やかなつゆにつけ、ツルツルと食べる。噛めば小麦粉の香りが漂う見事なうどん、言ってみればひやむぎのニューヴァージョンである。暑いときこそ熱いものという方には、釜上げがある。(山)

赤坂/古家庵
石焼ビビンパップ(昼850円 夜1,200円)
東京都港区赤坂3-20-8臨水ビルB1
03-5570-2228
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「だめだめ!もっと混ぜなきゃ」。僕が初めてビビンバの食べ方を教わったのは、西新宿でカウンターだけ小さき店を切り盛るオンマ(お母さん)だった。出されたおしゃべりをやめ、精神を集中し、ご飯の白い部分を残さないように、徹頭徹尾、完膚無きまでぐちゃぐちゃに混ぜるべし。それがビビンバのおいしい食べ方さと厳しく指導されたのであった。さらには「だめよこねるように混ぜちゃ!」とも怒られた。混ぜこねるのは厳禁で、空気を入れるようにさっくりと、箸ではなくスッカラ(韓国スプーン)を使って混ぜるべしということも教わった。こうして混ぜることによって、第三の味が生まれるのだ。「ビビダ(混ぜる)」という動詞と「パプ(ご飯)」が合わさったビビンバ(正式にはビビムパプ)は、よくよく混ぜることによって真価を発揮する料理なのである。
「ナムルがおいしくなきゃ、ビビンバはおいしくないのよ」と教えてくれたのは、山村のオンマだった。作り置きせず、その日に作ったナムルで作るのはもちろん、韓国料理で一番大事な”手の味”が生きたナムルでなければならない。すなわち、熟練した職人が絶妙な手加減で野菜から水分を抜き、指先で味を染み込ませたナムルでなくてはいけないのだという。山村のビビンバに入る太くみずみずしいニンジンや大根、香りが生きた青菜など、十二分に混ぜ込んでも味わいが生き、全体の力強さを後押ししている。甘すぎず旨味を感じさせる味噌の風味もよく、ナムル、海苔香、目玉焼きやご飯の甘みを渾然一体とつなぐのである。
シモンもまたビビンバにおけるナムルの大切さを気づかせてくれる店である。胡麻やにんにく、醤油などの風味が染み込んだシャキシャキと弾むニンジンやもやし、、香りが生きたほうれん草、しなやかな歯触りのといったナムルたちがご飯となじみ、スッカラ持つ手を加速させていくのである。それに加え、ヒリリと辛さの効いた味噌味も後を引かせる原因だ。
そんな味噌の重要さを教えてくれる店が古家庵である。古家庵のビビンバに用いられる自家製ヤンニョムジャンを一口なめてみると、数々の旨味が複雑に混じりあった、味の奥行が広がって思わず笑みがこぼれる。その風味がご飯一粒一粒に染み込むように念じながら、よぉく混ぜ合わせて食べてみると、あら不思議、日本人なのに母親の慈愛を感じるやさしい味となるのだ。たとえ食文化が異なろうとも、丁寧に作られた料理には、毎日食べてもあきない力強さと温かさが宿る。そんなことを教えてくれるビビンバでもある。(牧)
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いまでこそ「ねぎし」と言えば、牛たんの炭火焼であまねく知れ渡っているが、いまから15年ほど前は、西新宿の横丁にひっそりと居を構えていた小さな飲食店だった。
新宿という大都会で誠実な味を売り続けることはとても難しい。リピーターをつかむ努力をしなくとも、新しい客が次から次へとやってきてくれるから、ついつい質より量ということになりがちなのである。そんな中にあって、「ねぎし」の牛たんの炭火焼は料理のクォリティを守り続けてきた、新宿にしては稀な飲食店だったといってよい。
その甲斐あってか、いまの繁昌ぶりは目を瞠るものがある。そのうちの1軒、渋谷公園通りの「新宿ねぎし」を訪れてみた。「ねぎし」の牛たん炭火焼を味わうのは10年ぶりぐらいだろうか。
店は地下にあるが、清潔感に溢れていて、炭火焼の煙が店内に漂うこともない。ねぎし定食を注文。15年ほど前と値段も定食の内容もほとんど変わっていない。さて味はどうだろうか……。
これがまた以前の印象がすぐに蘇ってくるような味わいなのだ。あぶり具合がいいから焼き過ぎにならず、たんの肉汁の甘いこと。テールスープの澄んだ味わいも、これまた変わりがない。麦めしにとろろをかけ、唐辛子の南蛮漬をつまみながら牛たんを食べているうち、15年前にタイムスリップした感じだった。(山)

ベーカーバウンズは住宅街の中でぽつねんとたたずむ店である。入り口横にはなぜ かドラム缶、店内は、古いアメリカのポスター、ブリキのおもちゃ、アルミの灰皿 やコークの刻印入り紙ナプキン、流れる60's USAヒットチューンと、アメリカの古きよきダイナーの雰囲気であふれている。
お奨めはベーコンエッグバーガー。注文を入れると店主が炭火のグリルでパテを焼き始める。グリル網をこまめに上下させ、肉汁を逃さず焼こうとしている様子で、只者ではないと思っていると、やがていい香りが胃袋をくすぐり始め、迫力あるハンバーガが運ばれる。まずはなにもか けずに、両手で慎重に持ち、口をあんぐりとあけてほおばれば、なによりもパテの魅力に顔が崩れる。ひき肉がごろごろと粗く、かみ締める喜びがあって、噛むごとに煉り肉ならではのうまみがにじみ出てくる。聞けば毎朝、赤身肉を手切りにてミンチされているのだそうだ。この力強いパテにすかさずパンチを浴びせかけるのが、ベーコン。やや厚切りにされたベーコンは燻製の香り強く、塩に負けない脂の甘みがある。これが店前のドラム缶にて燻製にされたベーコンなのである。パテとベーコンが四つに組み、たまねぎ、レタス、トマト、ピクルスの食感がアクセントし、気分は上々。添えられるフライドポテトもカリッと軽快な音を立て気分を盛り立てる。
細心の思いが込められた、人をとりこにする傑作ハンバーガーである。(牧)
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浅草/レストラン・オマージュ
ランチ(1,550円)
東京都台東区浅草4-43-4
03-3874-1552
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浅草といっても4丁目になるから、観音様の裏手、言問通りの5656(ゴロゴロ)会館の横丁を北へかなり歩いていった先右手に店はある。まさにこんなあたりにと思う場所にあるフランス料理店である。
しかし、料理は、本格派といってよい。ランチのメニューではないが、仔羊と南仏野菜のテリーヌ・カレー風味という料理が目をひいたので注文してみたところ、周りをクルジェットで包み、仔羊といわゆるラタトゥイユ状になった野菜がテリーヌになって現れた。その周りを極軽いカレー風味のソースがかけまわしてある。味わいはもちろんのこと、姿に品格があり、しかも、カレーがソースではなくあくまで風味として添えられている。京橋「レストラン・サカキ」の牛肉のポトフのテリーヌ仕立て・レンズ豆添えと好対照の見事なひと品である。
1,550円でサービスされる最もリーズナブルなランチでも、このセンスは発揮されていて、スターターのにんじんのポタージュはクリームに頼ったものではなく、にんじんの香り味わい豊かなものだったし、豚バラ肉とキャベツのスープ煮も、キャベツにうまみを十分吸い込ませた逸品だった。これにデザート、コーヒーがつく。デザートのヌガーグラッセ、クレーム・ブリュレとも上出来。
店内はクリーム色で明るく開放的で清潔感に溢れている。シェフはフランスでの修業歴がある30歳の若者。皆でもり立てたい1軒だ。(山)

九段下の「寿司政」といえば、池波正太郎氏が愛した店としても有名なすし屋である。池波正太郎氏をはじめとして多くの文化人に愛されてきたこの文久元年創業の老舗には、しっとりとした風情と色気が流れていて、江戸前のすしを楽しむ時間をいっそう華やかにさせてくれる。
そんな「寿司政」には昼だけのお値打ちがある。1,800円のちらしずしだ。目前に運ばれ、まず心を奪われるのはそのあでやかな姿だ。細く切った玉子焼きとサヤエンドウを対角線に散らしていきながら、間にすし種を挟みこむように数回に分けて重ね置きしているため、器から目に飛び込んでくるような立体感がある。玉子焼きの黄、こはだの銀、えびの紅白、おぼろの淡黄、マグロの深紅、サヤエンドウの緑などが交じり合い、重なり合った彩をしばし鑑賞し、「ううっ、早く食べたいっ」という思いを加速させてから箸を入れる。マグロやこはだ、赤貝やえびのうまみに浮かれていると、下に隠れていた穴子や煮ハマグリが現れて思わずほほが緩む。さらにそこに、酢バスや干瓢の歯ざわりや風味が加わって、気分はますます弾んでいく。食べ進むに従って、様々な味わいが舌の上で踊る様は、起伏に富んだドラマのように、胸をときめかす。生のすし種を配した吹き寄せちらしと煮たり〆たりと仕事を加えたすし種を細かく切って配したばらちらし、双方の魅力を集結させ開花させた、心憎い老舗の演出である。(牧)
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浅草/オラ・エ・ピアチェヴォーレ
ランチ(980円)
東京都台東区浅草5-7-2
03-3873-5665
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2003年暮、「J.C.オカザワの浅草を食べる」(晶文社出版)という1册が出た。<浅草の名店百選>とサブタイトルにあり、本の帯には<浅草の隅から隅まで食べつくし 前人未到の“食べもの屋”ガイド>とある。
浅草をこよなく愛する著者ならではの辛口批評が含まれているが、わたしの見るところ的はずれの論評はひとつもないように思える。そして、わたしもこの本に刺激され、久しぶりにかつての地元を食べ歩いてみたくなった。
幼馴染みの友達に連絡をとり、ガイドで取り上げられている浅草4丁目のフランス料理店「オマージュ」へ出かけた。5丁目はかつての象潟(きさかた)で、浅草の観音様の裏手、植木市で知られるお富士さんのあたりである。
ここでびっくりするほど本格派の美味しいフランス料理のランチを堪能した。しかし、千円グランプリからははみだす2,100円のランチだった。
店を出て歩きはじめたところで目についたのが、紅茶専門店の「オラ・エ・ピアチェヴォーレ」。看板にはイタリア語の表記のみが出ている。店を覗いて話を伺うと、毎日日替わりで980円のランチを出しているという。
早速1週間後に出かけてみた。竹の子入りのコロッケが2個とサラダ、それにごはん。食後には紅茶のアイスクリームとフレーバーティがついてきた。地元の、それも女性客がほとんどだが、浅草にあることが信じがたい店名の飲食店である。(山)

丼界において、焼き鳥丼は親子丼に遅れを取っている。肉汁と歯ごたえ、タレの濃い味わいでご飯を掻きこませる力は十分あるのに、手間がかかる点や玉子好きが世に多い点、鳥の質で味が左右されてしまう点などのために、焼き鳥屋以外はなかなか手が出せない料理となっている。しかも焼き鳥屋は夜からの営業が多いため、一般的な丼ながら希少な丼にもなっているのだ。しかし一方で、昼に営む焼き鳥屋にとっては技の見せ所で、胸のすくような優れた焼き鳥丼に出会うと、つい夜にも出かけたくなるってもんだ。
そんな焼き鳥屋の矜持に満ちた焼き鳥丼を見つけた。虎ノ門の鳥与志である。まず第一の魅力は、串に刺さった鳥肉の大振りなこと。タレ焼きのもも肉や塩焼きの手羽先は、歯が食い込むような食感があり、脂と肉汁とタレがからむ喜びがにじみでる。胸の軟骨をたたいて混ぜた大きな鳥団子は、挽きが荒くて噛み応えがあり、時折コリリと歯に当たるアクセントが楽しい。そしてなによりの魅力は血ぎも。ほんのりレアのやさしい火入れで、噛み込むとじんわり甘く目が細くなる。さらなる魅力は、焼き鳥の下、ご飯の上に敷きつめた鳥そぼろ。淡い味付けながら存在感があり、そぼろの煮汁と濃厚なタレ味がからまって、ご飯を勢いよく掻きこませる。焼き鳥ほおばり、すかさずそぼろご飯と、楽しみがつきない焼き鳥丼は、鶏に厳しい昨今だからこそ、人間の欲とわがままを反省しつつ、食べたい丼である。(牧)
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京橋/レストラン サカキ
もち豚のポークカツ(1,050円)
東京都中央区京橋2-12-12
03-3561-9676
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夜はフランス料理のディナーだが、昼はオムライス、海老フライ、ハンバーグ、ポークカツレツといった洋食を出すレストラン。
厨房を執り仕切るのは、未だ28歳(2004年現在)の榊原大輔シェフで、四谷の「北島亭」と一ツ橋の「七條」で修業を積み、2002年、父親の跡を継いで、店内を改装し、メニューを一新した。
父親の仕事の名残りがハンバーグのドミグラスソースに垣間見えたり、海老フライは「七條」直伝といってよいが、昼の宮城産もち豚のポークカツは、とんかつ専門店顔負けの出色の出来といってよいひと皿である。
肉厚の豚ロースにしっかりと火を通してあるが、ひと切れ口に運んだときの、適度な歯応えのあとの味わいのよさは目をみはるものがある。これにスープとライスがついて1,050円である。現在、東京中で最もコスト・パフォーマンスに優れたカツレツといってよいだろう。
フランス料理のディナーの中にこれらの洋食を組み込むことも十分可能である。仔羊のローストの前に海老フライを、魚料理のあとにポークカツを楽しんで違和感がないところがこの店ならではの魅力で、ディナーのポークカツは骨付きロースで、ミラノ風カツレツごときに揚げてくれる。
シェフがフランス料理を学んだことで、洋食がリフレッシュして、さらに磨きがかかっているというのがなにより嬉しい。いま期待の星のレストラン!(山)

浅草/アロマ
バタートースト(1枚80円)
東京都台東区浅草1-24-5
03-3841-9002
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トーストの幸せを知ったのは、ロンドンだった。大学時代に10日ほどホームステイをしていたとき、ホストファミリーが作ってくれたトーストの美味しいこと。薄く、こんがりと焼けていて、バターの香り高く、食べれば軽快な音が響く。しごくシンプルなのに、毎朝しみじみと感動してしまうのであった。
そしてこういう質素な料理にこそ、作り手の心根が素直に現れるということを教わったのである。だが、普段日本では、トーストを料理としてはあまり意識をしない。外食の場合はなおさらで、喫茶店のモーニングなどを何気なく食べてしまう。
しかし、ここにプロの心意気を感じさせるトーストがある。アロマが使うパンは、食パン界の重鎮、田原町のペリカン製。ご主人は、約2センチ幅のパンをトースターに入れ、一定時間で取り出して裏返し、再び焼く。焼き上がると、素早くバターを塗って目の前へ。香ばしく焼き上がったパンは、表裏ともむらがなく焼き色ついて美しい。かじればサクッと音がして、耳はタルト生地のように軽やかに崩れ、バターの香りが顔を包み、歯は、甘くもっちりとしたパンにめり込んでいく。9センチ四方に込められた おいしさに、顔は緩み、すぐさまもう1枚と頼んでしまう。
まずは基本のバタート ーストを食べ、次にジャムやチーズと進んだら、最後は、塩、マスタード、少量の マヨネーズを塗って、生タマネギとピクルス挟んだ、ご主人考案の、絶妙オニオン トーストお試しあれ。(牧)
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門前仲町/Passo a Passo
サッコティーノのパスタランチ(1,200円)
東京都江東区深川2-6-1アワーズビル1F
03-5245-8645
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店名の「パッソ・ア・パッソ」とは、一歩ずつという意味のイタリア語だそうだ。その名の通り、地に足がついた堅実なイタリア料理を出す。しかも、それが良質廉価で極めてコスト・パフォーマンスに優れている。都心からわずかに離れてた門前仲町という下町にあるが、わざわざ訪れるに値するイタリア料理店といってよい。
前菜2品にパスタ、主菜、デザートの夜のおまかせコース3,980円を選んでみると、ホタルイカにクスクス(スムール)を合わせた冷菜と甘鯛と野菜を組み合わせたスープ仕立ての温菜の前菜2品に竹の子といのししのパンチェッタのリングイネ、それに仔羊のフィレ肉のロースト。デザートは苺のスープにホワイトチョコレートのアイスクリーム添えといったメニューで、どの皿もみな高品質で、目をみはるほどの味わいだった。
オーナーでもあるシェフは、イタリア各地で修業を積んできた32歳(2004年現在)の新星である。
この店のパスタランチがまたコスト・パフォーマンスが高いのだ。スパゲッティ以外にもパスタが豊富なメニューの中、聞きなれぬ名前の手打ちサッコティーノというパスタを注文してみた。早い話が、イタリア版の小籠包で、中には豚肉と竹の子が詰まり、頬張ると温かいスープがこぼれ出てきた。文句なしにうまい。これにスープとコーヒーがついて1,200円。毎週でも通いたくなるようなパスタランチである。(山)

レストランで昼食を食べていると、時折サービスと称してミニサラダが付いてくるが、あれほど悲しくなる料理はない。大抵は作り置きのためか葉類は乾燥して味気ないし、ドレッシングが申し訳程度にかけられているだけなので、葉類が油でコーティングされておらずに食感も悪い。量もあまりにも少ない。かといって残すのは忍びないので食べてしまうので余計に悲しくなる。
こうしてサラダへの欲求不満がたまると出かけるのが、「ラ・ブリーズ・ド・ヴァレ」だ。頼むのは「三島野菜のゴースサラダ」。まず驚かされるのがその量だ。マーシュ、レタス、サラダ菜、ラデッシュ、食用花、カブ、にんじん、黄大根、紅心大根、水菜、インゲン、ブロッコリー、アスパラガスに、セルフィユ、デイルなどが、直径30センチほどの大ボールにどっさりと盛られるのである。畑から直行したという野菜は、いずれもみずみずしく、甘く、苦く、香りが高い。土の温かさがある。添えられたフレンチドレッシングをかけまわし、トングでよくよく混ぜて食べれば、滑らかに口に入っていき、ドレッシングの塩と酸が野菜の風味を引き立てる。まさしくこれぞサラダ。一人で食べるにはかなり勇気がいる量だが、野菜それぞれの多彩な味わいがあって飽きさせず、食べているとなんともすがすがしい気分になってくる。2人で分け合うのもいいが、ぜひお一人でひたすらムシャムシャと食べ、サラダの至福にひたることをお奨めする。(牧)
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下北沢/ラーメン・キッチン あさの
旬菜めん(800円)
東京都世田谷区北沢2-9-19植松第1ビル1F
03-5452-0772
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5年ほど前まで、わたしは同じ西荻窪でも駅から5、6分のところに住んでいて、なんと1軒おいた隣が料理研究家の小林カツ代さんのキッチンスタジオだった。当然、往き来をするようになり仲良しになった。現在はふたりともその場所には居なくなってしまったが、近況報告などの便りは絶えていない。
2004年になってそのカツ代さんのスタジオから、ラーメン専門店を下北沢にオープンしたとのお便りをいただいた。
そのお知らせには「お客様の健康に心を配り、雑味なくカロリーもおさえた秘伝のクリアなスープ(干貝柱・干海老・昆布・椎茸・鶏肉をベース)にコシが強くのびにくい細麺(卵麺)をつかっています。じっくりと吟味したこれまでにないラーメンです」と書かれてあった。
わたしは店がオープンしてもすぐには出かけないタチで、1ヶ月ほど経って店が落ち着いたと思われた頃、ふらりと店を訪れた。
店は白を基調に明るく清潔な店内。メニューから「あさの特製旬菜めん」を注文した。これが水菜が入った塩味スープのラーメンで、化学調味料に頼っていないから、クリアにして滋味があり、しかもシャープな切れ味を持っていた。チャーシューも玉子も素材の味がしっかりとする。残ったスープにかやくごはん(100円:2004年4月はサービス期間中)を入れ、最後の1滴まで飲み干した。ラーメンを食べた後の久しぶりの爽快感。2度目に出かけた「しょうゆらーめん」も快適。(山)

2003年躍進的に人気を得た料理のひとつにカレーうどんがある。以前はカレーうどんといえば町のそば屋の | |