| ホンモノが食べたい!
|
| 赤坂/ARONIA DE TAKAZAWA |
東京都港区赤坂3-5-2サンヨー赤坂ビル2F
03-3505-5052
赤坂のフランス料理店「ビストロ・サンノー」が2004年末に店を閉めたあと、2005年9月にオープンした。内装がシンプル・モダンになり、鉄板焼のオープンキッチンがステージのように映える斬新なレストランである。しかも、お客は1日2組までに限定、1組でも10名で貸切りというユニークなシステムを採っている。
メニューはコース料理に限定され、アラカルトはない。アミューズにはじまり、前菜、魚料理、肉料理、デザートとフランス料理のフルコースのスタイルをとってはいるが、食材も調理もフランス料理にとらわれない。ヤーコン、アピオス、黒大根といった野菜にはじまり、東京湾や房総といった地場の旬の魚貝や北海道のジビエまで登場する。締めくくりのデザートは、温かい生姜のホットチョコレートを京都炒り番茶のアイスクリームと一緒にサーヴィスするといった具合。言ってみれば、今年30歳になる高澤シェフの料理ワールドだろうか。塩加減、火の通しがピタリッと決まった調理で、料理に脆弱さはみじんも感じられない。
さらに、ユニークなのは、ワインの品揃え。山梨の“甲州”品種のワインを吟味して選んである。同じ土壌から出たものなら、野菜もぶどうも相性がよいはずという観点からで、事実、勝沼醸造の「アルガピッパ」は、野菜ばかりでなく魚にも肉にもよく合った。ぜひお試しあれ。

|
| 銀座/御魚 大渕座 |
東京都中央区銀座3-10-14東銀一ビル2F
03-5565-3788
長い間代官山でフランス料理店「ラ・ヴィーナス」を開いてきたオーナーシェフの大渕康文さんが、その店を閉め、銀座に進出してきた。その名も「御魚 大渕座」。なんとも大仰な店名と感じる人もいるようだが、店はカウンター5席とテーブル12席のとても小ぶりなレストランである。魚料理を中心としたコース料理のみでメニューが組み立てられている。前菜のあとにパスタが出るわ、ごはん(わたしが出かけたときは2度ともいくらごはんだった)は出るわで、これまで大渕さんが「ア・タント」「アルピーノ」「ラ・ヴィーナス」で展開してきたフランス料理とひと味違う。ご本人は“超フレンチ”とおっしゃるが、これこそ“大渕料理”ではなかろうか。
最上席はカウンターの5席である。奥の厨房から調理されたものがフライパンにのせられたまま、小さな窓口から現われる。それをカウンター内にいる料理人が皿に盛りつけ、それをダイレクトにサーヴィスしてくれる。まながつおのムニエルなど、バターソースで舌が火傷しそうに熱かった。このように、厨房から料理が最短コースで運ばれてくるのだ。テーブル席もほぼ変わらない。なにしろ、トータルで17席、それも満席にはしない状態で営業をするというのだから、料理のクォリティは保証されているといってよい。
料理人の個性を、才能を楽しみたいと思う食いしん坊で、テレビのスターシェフやアイアンシェフに興味のない方に打ってつけのレストランである。

|
| ニース/Kei's Passion |
22 ter rue de france,06000 Nice,FRANCE
+(0)4 93 82 26 06
「ホンモノが食べたい」では異例の番外篇とでも言うべき、フランス・ニースにある小さなレストランである。
店は“イギリス人の散歩道”と呼ばれる海岸大通りでもひときわ目立つホテル・ネグレスコにほど近い、裏手の小さな広場の一角にある。オーナーシェフが28歳の日本人料理人、松嶋啓介さんである。
じつは、このレストラン、2005年版の「ミシュラン」で、無印のランキングでありながら、来年、1ツ星が期待される“希望の星”の1軒に選ばれて注目を集めるようになった。
9月末に出かけると、席数は30席足らずだが満席で、しかもツーリストは我々のテーブルだけで、あとはニースの地元の常連客ばかりの感じだった。
わたしは前菜に、旬を迎えている茸、セップを使ったリゾットと、主菜に店のスペシャリテ、牛肉のミルフイユを注文した。メニューから2皿を選んだのだが、前菜の前にアミューズ(つき出し)が出て、デザートの前にもプレ・デセールがサーヴィスされ、上機嫌でディナーを楽しんだ。どの皿も注意深く調理されたものばかりで、火の通しといい、塩加減といい文句なしだった。若いフランス人ふたりのサーヴィスも笑顔があって、良質のワインを揃えたリストも、料理のレベルに見合っている。ジャバラ式のトイレだけは心配材料だが、ひょっとすると、来年この店に1ツ星が輝くかもしれない。

|
| 代々木上原/飄香 |
東京都渋谷区上原1-29-5BIT代々木上原001
03-3468-3486
飄香と書いて、ピャオ・シャンと読む。店の案内には「老四川 飄香」とあり、「中国では“老”という字には『歴史を重ねた、昔からの』などの意味があり、飄は『揺く、漂う』という意味です。つまり昔の四川省『Old四川が漂い香る』という店のコンセプトから付けています」とある。
主人兼料理長の井桁良樹さんは、柏「知味斎」の出身で、その後、上海、四川へ出かけて修業を重ね、2005年、代々木上原に「飄香」を開いた。だから、四川料理が中心ではあるが、コースメニューには四川以外の料理がいくつも組み込まれていて、ヴァラエティに富んだ献立に仕立ててある。
この店、「1000円味のグランプリ」の相棒、マッキー牧元さんに教えてもらい、最初、彼が勧めるサービスランチを食べに出かけた。これが素晴らしかった。小鉢に当たる前菜から、作り置き、手抜きをいっさいせず、しかもその味わいに品格を感じさせた。主菜は、にんにくの芽とアオリイカのピリカラ炒め。アオリイカとにんにくの芽をピリカラソースでつなぎ、その相性は抜群だった。このランチ、近年最高峰の1000円グランプリと言ってよかった。
すぐに夜のコースをいただきに出かけていったのは言うまでもない。蟹肉とフカヒレ・冬瓜のすり流しスープが運ばれてきたと思えば、その後に激辛羊肉の香料炒めが出る、といった具合で、コースに心地よいアクセントとリズムがついている。デザートまで新鮮な驚きが連続する、いま飛び切りの中国料理店である。
(夜は5,000円、8,000円のコースのみ)

|
| 銀座/さわ田 |
東京都中央区銀座5-9-19MCビル3F
03-3571-4711
2004年暮、中野のわずか3坪の店から、いきなり銀座5丁目に進出した「鮨さわ田」が、相変わらず主人ひとりながら順調に営業を続けている。というのは、中野で開店してしばらくはお客がやってこない日もあり、そんな晩は残ってしまった上質のすし種をどんぶりに盛っては、ひとりでちらしを食べていたことがしばしばあったという。
それがあれよあれよという間に評判を呼び、夜2回転の営業は満席続きで、たちまち東京有数の人気店になった。夜6時と10時の1日2回の席は、まず酒のつまみがいくつも出た上え、にぎりのコースというものだった。主人澤田さんのにぎりを楽しみたいと思っていても、つまみでお腹が結構満足してしまうことがあったのも事実。澤田さん自身も、出来ればにぎり1本でお客様に満足していただけるすし屋でありたいと思っていたらしい。
それが2005年7月から、昼席に限ってだが、にぎりのみのコースとなった。夜席は相変わらず酒のつまみがいろいろ出てからにぎりとなるコースだが、にぎりずしだけ堪能したい者にとってこれは待ちに待った朗報といってよい。
にぎりが約18貫にぎられて、料金は18,000円ほど。8月上旬、つけ台に出てきたのは、まこがれいにはじまって、しんいか(すみいかの子)、たい、みる貝、きす、それからまぐろが3種……といった具合。すし種を出来るだけ熟成させてからにぎるのが澤田流である。

|
| 銀座/ラ・ソース古賀 |
東京都中央区銀座6-13-7
03-6226-0671
“フレンチから飛び出したワンプレート”というキャッチフレーズの「ラ・ソース古賀」が、2005年7月21日に銀座6丁目にオープンした。代々木上原のフランス料理店「コム・シェ・ヴ」のオーナーシェフ古賀義英さんがプロデュースするカレーソースがベースになった「ソース・キュリー」と「ソース・ブイヤー」の2種のメニューが売り物である。
「ソース・キュリー」は、牛のすね肉と幾多の野菜から抽き出したブイヨンをベースに、カレールーとワインとスパイスを加えたカレーソースをごはんと一緒に食べるひと皿。ひとことで言うと上等のスープカレーである。古賀シェフは「シェ・イノ」の井上旭シェフの薫陶を受けた料理人であるから、フランス料理におけるソースの重要性を誰よりも深く理解しているひとりである。その古賀シェフのアートとハートが香るソースといってよい。
一方「ソース・ブイヤー」は名前からも察せられる通り、魚介から出汁をとったところへ、カレー風味を加えたブイヤベースソース。これもまた脇にごはんを添えて食べる。このごはんとの相性がまことによろしい。トッピングには、牛ほほ肉や仔羊、チキンが用意され、野菜も季節によっての品揃え、サイドメニューにもラタトゥイユや小玉ねぎのワインビネガー風味がある。また、グラスワインと一緒に楽しむ手もある。午前11時から夜11時まで通し営業、年中無休というのもありがたい。(ランチタイム〜14時:ソース・ブイヤー 1,250円)

|
| 六本木/龍吟 |
東京都港区六本木7-17-24サイド六本木ビル1F
03-3423-8006
店内へ入ると、正面にカウンター席が見え、主人の山本征治さんが、カウンター席の客の相手をしながらも、颯爽と堂々と仕事をしている。まるで、劇場の舞台のような設えである。テーブル席も四角ではなく丸テーブルを巧みに配置して、従来の日本料理店とはまったく異なった空間を作っている。これだけでも、伝統的な日本料理ではないものが献立に組み込まれているだろうことが予想できる。
6月の献立の最初のひと品からして、予想通りというか、斬新なつき出しが出た。“白ズイキと三ッ葉のお志多し すだちの泡で”と呼ばれるものなのだが、おひたしの上にふうわりとかけられたものが、すだちの香りも鮮烈なエスプーマ(泡)なのである。スペインで世界の最先端の料理を生み出し続けている「エル・ブリ」のフェラン・アドリアが考案した、味と香りを損ねることなく、食材の食感を変えてしまう調理法を、日本料理に応用したものといえようか。このほか、“夏野菜2005年”では、空豆と実山椒のヌーベが、デザートでは、ココナッツとパイナップルのピニャコラーダや牛乳とハーブとクルミで作ったアロマテラピーなアイスクリームなどが登場し、スペインの新しい風を日本料理のそよ風に変えて楽しませて楽しませてくれる。もちろん、鱧のすっぽん仕立ての椀にしても、天然鮎の炭火焼きにしても、日本料理の調理のツボははずしていない。今後の展開がとても楽しみな日本料理の1軒。

|
| 吾妻橋/どぜう ひら井 |
東京都墨田区吾妻橋1-7-8
03-3622-7837
どぜう鍋といえば、夏のなべの代表格。そのどぜう鍋を食べさせる名店が下町には勢揃いしている。「駒形どぜう」は老舗中の老舗で、籐敷きの大座敷に上がり、酒を飲みながらなべをつつく楽しさはこたえられない。酒よりもごはんと一緒というなら浅草の「飯田屋」という人が多い。また、ちょいと足を延ばして江東区の高橋(たかばし)にある「伊せ喜」は、夏でもエアコンがなく、店からもらった団扇を使いながら、汗かきかきのなべもこの店ならではのものである。
ここでご紹介する「ひら井」はいま挙げた3軒ほど知られてはいないが、どぜう鍋としては一級品を出す店としておすすめしたい1軒である。浅草から吾妻橋を渡り、アサヒビールの本社ビルを左手に見ながら大通りを進んでゆくと、右手に小体な店が現われる。店に入ると、左手が小上がりの座敷、右手前にテーブル席がひとつだけ用意され、あとはオープンな調理場となっている。
ご主人と女将さんのふたりでまかなうどぜう屋ながら、鰯の三杯酢やら、みつばわさび(もちろん本物のわさび)、いんげんごま和え、なすのしぎ焼きなど、どれも手抜かりのない丁寧な仕事をみせてくれる。どぜう鍋のごじょうは、まったく臭みのない、口の中でたちまち溶けてしまうほど柔らかく煮込まれたもの。ささがきごぼうと刻みねぎと一緒に食べる味わいは格別である。仕上げはどぜう汁とご飯、これまたうまし。
どぜう鍋 1,790円 どぜう汁 400円 ごはん 220円

|
| 六本木/すきやばし次郎六本木ヒルズ店 |
東京都港区六本木6-12-2-B六本木けやき坂通り3F
03-5413-6626
六本木ヒルズのオープンと同時の開店だから、2005年4月末でちょうど2年経過したところである。開店どきに1度訪れただけで、その後は店の前を通り過ぎるのみ。この5月に久かたぶりに出かけてみた。
ご存知の方もおいでだろうが、この六本木店は、「すきやばし次郎」をはじめた小野二郎さんの次男隆士(たかし)さんが主人となってすべてを執り仕切るすし屋で、ゆくゆくは数寄屋橋店の主人となる長男の禎一(よしかず)さんとともに、親父であり師匠である名人のもとで、すでに20年以上修業を続けてきたすし職人である。
ご本人がすしをにぎりながら話すところによれば、「親父のにぎったすしは一度も口にしたことはありません」とのことなのだが、彼のにぎるすしの、姿かたちばかりではなく味わいまで、なんと小野二郎のにぎりずしに似ていることか。もちろん、師匠に仕込まれた通りの仕事ぶりだから、似てくるのは当然とはいえ、名人小野二郎のにぎるすしを数えられないほど食べてきたわたしが驚くほど、そのにぎりは美しくそして美味しいのである。
この若きすし職人の技を堪能したければ、“おまかせ”を味わうのがよい。数寄屋橋同様にぎりずしが20貫ほど出てくるが、3部構成の終章、二郎さんはうに、小柱、いくらを軍艦巻にするのに対し、新しい提案をしてくる。うにのあとにはしゃこをはさんで小柱につなぐ。このアクセントのつけ方にわたしは大賛成。秋の“おまかせ”が楽しみである。(予算20,000円ほど)

|
| 白山/ラ・ベル・ドゥ・ジュール |
東京都文京区白山4-37-22
03-5395-4841
オーナーシェフの深津泰弘さんは、ヨーロッパで本格的な料理修業をしてきた料理人で、と同時にフランス料理の食文化の深さにも触れてきたひとりでもある。料理ではスイスの最高峰として知られた料理人、フレディ・ジラルデの薫陶を受け、多くを学んで帰ってきた。
帰国後は南青山にあった「ポワソン・ムージュ」を振り出しにシェフとして活躍、オーナーシェフとして店を開いたのがこの白山にある「ラ・ベル・ドゥ・ジュール」である。それからすでに10年以上はゆうに経っているのだが、深津シェフの信念はますます揺るぎないものになっている。つまり、美味しい料理をさーヴィスするレストランとしてだけではなく、フランスの食文化を伝えたいがために、料理を美味しく味わってもらうレストランの時間と空間を提供したいと……。
アール・ヌーヴォの内装の中、料理のほとんどはゲリドン・サーヴィスといって、お客のテーブルのすぐ横で、皿に最後の化粧をほどこしてサーヴィスする。いまでもフランスの一流レストランでよく見かけるフランスの伝統的なサーヴィスである。深津シェフの心意気に賛同できるフランス料理ファンは、予約を入れて心弾ませて出かけるべし。料理はアミューズから出色だが、前菜のオマール海老のサラダ、アスパラガスのミルフィーユ、主菜のラカン産鳩のロースト、シャラン産鴨のジラルデ風はとりわけ逸品である。

|